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隣人のち恋人、ときどき変人。
【幼馴染 恋愛小説】

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隣人のち恋人、ときどき変人。-3

「いやぁ〜…それにしても変わってるよな〜、佑香サン。」
友人2人のうちの1人、金井大二朗が隣の男、宮崎祐に同意を求める。
「だよな。…まぁそれでも秀太は佑香サンが好きだって言うんだから、
 俺から言わせたらもっと変わってるけどさ。笑」
祐がさもおかしそうにククク…、と笑いを堪えながら言う。
…まぁ祐が言ってることは事実な訳だから俺は何も言い返せないんだけど。
『うっせ〜なぁ。好きなもんはしょうがないじゃんよ、どうにもなんね〜よ。』
2人より遥かに遅く食べ終えた昼食を片付けながら、言われ放題の状況にせめてもの弁解。
「…まぁ俺らはお前が好きなんだったら応援するけどな。なぁ?」
「うんうん。…でも好きなら早くそう言うべきじゃね〜の?
 …佑香サン、顔はかなり可愛いわけだし。
 早くしないとどっかのゲーオタに先を越されちゃうぞ。」
教室に鳴り響いた予鈴を聞いて、
冗談半分にそう言いながら大二朗は自分の席へと戻っていった。
「…アイツは良い奴なんだが…いかんせん無神経だ…。笑
 ま、気にすんなや。お前はお前のペースで行きゃいいよ。頑張れよ。」
肩を軽く叩いて、同じように帰って行く祐。
サンキュ…。
大二朗の言ってることが正しいのは俺ももちろん祐もわかってる。
わかってるのにまだ言えずにいるのは、………いや、違うな。
わかってても、すでにもう言えなくなってるんだ…。
今更、どうしたら改まって『好きだ』、なんて言えたろう。
机に顔を伏せると、目に浮かぶ佑香ちゃんのなんとも言えない困り顔。
「…今更そんなこと言われても…。
 秀太君はただのゲー友(ゲーム友達)としか思えないよ〜。」
はは、そんなこと言われた日にゃあ死にたくなるね、間違いなく。苦笑
憂鬱な気分で眠りにこけた午後の数学。
そんな中で見た夢は、案の定、死にたくなるような夢だった。
教室中に響き渡る声で叫びながら目を覚ました時の俺の顔は、
それはそれは傑作だった、と大二朗は笑った。
放課後のチャイムが流れ、少しずつ騒がしくなるグラウンド。
俺は部活をする気にはなれなかったので今日はそのまま帰宅することにし、
その旨を祐に伝えると、重い足取りで駐輪場へと向かった。
外の風はもう完全に冷えきり、冬の到来を告げていた…。

…はじめは勘違いだと思った。
何年も一緒に遊んで来た、ほとんど家族同然の人を好きになったなんて。
確かにエキセントリックな部分があるとは小さい頃から薄々感じてたけど、
それでも佑香ちゃんは誰よりも優しくて誰よりも楽しい人だった。
初恋の人にフラれて落ち込んでいた僕を慰めてくれたのも、
部活でレギュラーに入れずに凹んでいた僕を励ましてくれたのも、
父親を亡くして部屋にひきこもっていた僕を抱きしめてくれたのも、
他の誰でもない佑香ちゃんだった。

「…君……秀太君、…起きてってば〜…。」
目を覚ますと、飛び込んで来たのは佑香ちゃんの逆さまの顔。
憂鬱な気持ちを引きずったまま学校から帰って来た俺は、
いつの間にか床の上で寝ていたようだ。
「あ、やっと起きた!」
顔を見れば見るほどこみ上げてくる、冷たくて重たい気持ち。


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