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痛みキャンディ
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痛みキャンディ2年-2

「隆…どうして逝っちゃったの…」

涙は止まないようだった。気が付くとおれは足を止めその人を見つめていた。

なぜだろう。 
他人に関心など持たないようにしていたのに。 

そして気が付くとこう言っていた。 

「どうしたんですか?」

今考えてもそんな事をなぜ知らない人に話しかけ、関わろうとしてしまったのかがわからない。 

これは昨日舐めた痛みキャンディのせい? 
それとも… 

「彼が死んでしまったんです…」
不意の質問に戸惑いながらもその人は答えてくれた。 
おれにはわからない。 
誰かが死ぬと涙を流す理由が。 

ポケットに入れたままの痛みキャンディを舐めてみた。 
酸っぱい野苺のような味がした。 
その味が味覚として伝わると同時に何かがおれの中に流れ込んできた。 

それは感情。 
死別の痛みだろう。 
 
愛されていた。 
笑っていた。 
抱き締められていた。 
2つの世界が優しく繋がり合っていたのに… 
片側が崩れ落ちた。 
ガラガラと。 
突如残された世界はバランスを失った。 
空っぽになった。 
2つの世界は互いに寄りかかっていたから。 
空っぽの残された世界の中には思い出が流れ込んだ。 
戻らない笑顔や優しさやエピソードや他愛もない一場面がぐるぐると巡り廻る。 
それを愛しむとそれだけもうそれが二度と帰ってこないことが浮き彫りになる。 
受け入れようが拒もうが。 
それが悲しくさせるんだ。 
それがあの涙。 

おれの胸は張り裂けそうになった。 

おれは立ち尽くした。 
ベンチの人も涙が止まらない。 
何か言葉を伝えたかった。思いつかない。 
おれは頭を下げて逃げるように立ち去った。 

忘れていた痛みは情緒不安にさせた。 

アパートで待つクゥを抱き締めながらおれはぶるぶる震えていた。 


痛みは毒だ。 

そんな事さえ感じていた。 
何も考えたくない。 
感情なんて忘れたままでいいから。 

おれは膝を抱えながら何時間も空想の世界に逃げ込んだ。 

そんなおれをクゥは心配そうに見つめる。 

いつか世界がなくなるなら。
誰にも寄りかからずに失う痛みなんて知りたくない。 
おれはまだ歩きだせない。 
弱い自分と向き合えないから。 

窓の外は真っ暗な闇が覆い尽くしていた。 
おれのこの痛みも闇が隠してくれることを望みながら眠りについた。 

痛みは凶器。 
そんなおれにも明日はやってくるのだろうか… 

残骸な明日がやってくるのが怖くて堪らなかったのに何処かで明日を望み期待していた。 

それでも夜がながれる。 
おれとクゥにも…


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