セミ-1
聞こえてるよ。
まだ聞こえてる。
多分これから先、
少しずつ薄れてはいくんだろうけれども、
今はまだ聞こえてるよ。
私はきっとずっと生きていたいんだよ。
いろんなものに触れながら、
ずっとずっと。
でも君は決まってこういう。
そんなの人間らしくない。って
私もちゃんと考えたんだよ。
セミが地上にでてこれるのは一週間だけ。
地下で何年も何年も暮らして、たった一週間だけ。
でもだからこそ、その一週間には限りない希望があったんだよ。
なのに私は何年生きることができたら満足するの?。
きっと明日死んでも、100歳まで生きても、
やり残すことはたくさんある。
だからちゃんと造らなきゃ。
せめて噛み締めなきゃ。
もっと軽く軽く。綺麗に。動物らしく。
君は決まって言う。
そんなの由衣らしくない。って
でも私はセミじゃない。
それに私は知ってしまった。
もう少しそばにいたい。
それが連鎖して永遠になってしまったことを。