『 long-distance call 』-3
「大丈夫ですか?落ち着いた?」
後部座席に乗り込んでくると心配そうに優子の顔を覗きこむ。死んだ父親に似た優しい笑顔がそこにあった。
「はい、なんとか……」
優子はどうしてタイミング良く助けに来れたのか、という疑問を口にした。
刑事は困ったような顔で話し始めた。
「信じてもらえないかも知れないが、実は、一週間ほど前から自宅の方に無言電話がかかり始めましてね。最初は無視していたのですが、漏れ聞こえる声が親父さん、いや、貴女のお父上の声によく似ていて気になってはいたのです。今日は、いつになくハッキリと、貴女を助けに行け!とどやされまして、半信半疑でしたが駆け付けたというわけです。親父さんの、いや、お父上の葬儀でみかけた貴女がずっと気掛かりだったもので……」
刑事は照れたように言うと頭を掻いた。
「でも親父さん、いや、お父上も天国からじゃ、ずいぶんと長距離電話だったでしようねぇ……」
そんな刑事の、おどけた優しい言葉に、優子の中で何かがほどけ、恥も外聞もなく、父の面影を宿すその新米刑事の胸に飛び込むと、小さな子供のように声をあげて泣き出した……。
End