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モロクロくん。
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モロクロくん。-1

写真が色褪せてきた。 
鮮明に写っていたあの人も思い出と同様に記憶も薄れていく。

モノクロな世界。 
セピア色の過去。 
幕を閉じたすべて。 

それはきっとあの人も同じだろう。 
隣なりに写る僕もぼやけてきたから。 

思い出は戻らない。 
焼き回しもできない。 

二次元のこの空間は時が止まったままなのに。 

モノクロな希望もいつしか持たなくなった。 

叶わないことだとしっていたから。 

写真に僕は問い掛けた。 
「元気してますか?」と。 
もちろん返答はないはずだった…… 


「しょうがねぇ男だなぁ…」

声がした。 

少年のようなまだ低くなりきらない声だった。 

僕は慌てて聞き返す。 
「誰かいるの?」

何も返答はない。 

しばらく観察する。 

するとセピア色をした丸い物体が見えた。 
見えた気になっていただけかもしれないけど。 

「おまえはいつまで過去に囚われてんだ?」

謎の物体は問い返す。 

「もう囚われてないよ…」
僕は真顔で答えた。 

丸い物体はよく見ると白いまん丸の目玉をキョロキョロさせていた。 

「君は誰?」 

物体は動かず答える。 

「おれはモロクロ。記憶の番人見習いさ。おまえみたいな戻らない過去にグジグジしてる奴を観察しているんだ!」 

彼の名はモロクロくん。 
「モロクロ?モノクロじゃなくて?」 

バカにしているのかと言いたそうな目で僕を見据えた。 

「だいたいおまえは今を見てない!何か過去だ!戻らないもんをいつまでも待っているだけの腰抜け野郎だな…」

モロクロくんは口が悪い。そして僕の痛いところばかり突いてくる。 

傷が塞がらないんだ。
と言いたかったが堪えて

「僕の勝手じゃないか!」と僕も強く言った。 

「確かにおまえの好きにしたらいい。そこに意味があんならな。」 

意味は果たしてあるのか…僕は過去を美化して今を見ない。 
見ないから今を掴めない。チャンスは沢山あったけど指の間をスルスルと擦り抜けていくばかりだ。 


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