壁時計-8
浜本の動きを止めるには、かなりの努力が必要だった。すんでのところで茉琳を頂点に追いつめるところだった浜本が手を離すと、茉琳は裸身を翻して浜本の上になった。そして、今までの愛撫のお返しとばかりに、首筋から下へ下りながら濃密なキスの雨を降らせていく。二人の体の間で、茉琳の乳房が押しつぶされ、尖った乳首が浜本の素肌を擦った。人妻の甘い唇や舌の動き、悩ましい胸の隆起の感触、キスの間に漏れるあえかな声に、浜本は心底酔いしれた。
胸、腹、下へ下へ下りていく茉琳の唇は、確実に下腹に達するはずだ。目を閉じて横になっている浜本は、しかし予想に反して、茉琳の躯が自分の体を離れるのを感じた。次の瞬間、自分の周りでベッドのスプリングが微妙に凹んだ。どうしたんだ。訳の分からない浜本は目を開けた。ん、なんだ。顔を上げた浜本の顎のあたりに、さわさわと柔らかい毛の感触があった。
あっと思う間もなく、浜本の肉棒は茉琳の口の中に押し込まれていた。素っ頓狂な声を上げている自分に気づく。なんて暖かくて、柔らかいんだ。そして、この舌の動き。撫でさすり、絡みつき、締め上げている。圧倒的な陶酔感に、浜本は我を忘れていた。
はっと気づいた浜本が女陰への愛撫を始めたとき、茉琳の口の中では欲棒がすっかりもとの固さを取り戻していた。次の行動をとろうとした茉琳が口を離したとき、太腿に腕を絡めて花園をねぶる浜本の舌先が、快楽の真珠を探り当てた。
「はあうっ、うーっ」
茉琳は思わず男根を握り締め、腰を引こうとした。しかし、浜本は茉琳の下半身をがっちり固定している。前後に腰を振るのがやっとだった。
「ああ、とても綺麗だ。どこもかしこも、すごく濡れている」
口を離した浜本がまじまじと茉琳の花園の全景を眺めて言う。
「あなたがうまいからよ、浜本君」
「それ本当?狩野さん」
「うん。……ほら、分かる?」
茉琳は勃起した浜本の肉棒の根元を掴んで振った。
「もう元どおりに戻ったわ」
「狩野さんが、うますぎるからだよ」
「フフ、これ、食べちゃおうかな?」
「え?」
「このおっきなの、食べてもいい?」
「……うん」
茉琳は片膝を立てるようにして身を起こすと、今度は浜本の下半身の方に移動し再びまたがるように両膝立ちになった。そして片手を浜本の肩に当てて躯を支え、もう片方の手を男根に添えて腰を下ろしていく。
「あっ、あっ、ああーー」
厚い肉剣の切っ先が濡れそぼった花弁に触れたとき、茉琳は感極まったような叫び声を出した。濡れに濡れた花園の入口を、肉棒の先の膨満部が押し広げながら侵入していく。茉琳の声は、次第に高く、長くなる。ガクガクと揺れる頭、髪の毛が茉琳の歪んだ顔の周りを舞った。
「う、ううーん」
一転して茉琳の声が低くなり、浜本の欲棒はすっかり呑み込まれてしまった。浜本の腰に騎乗した茉琳は、そろそろと腰を動かし始める。ただ上下させるのではなく、雁首が肉襞をよく擦るように途中で腰を跳ね上げるような動作をした。そのとき、浜本は女陰の中で男根が扼されるような快感を覚えるのであった。
「あ、ああ、とっても、いい」
茉琳のため息混じりの甘い声に、浜本は目を開けて、自分の上で躯をくねらせる茉琳を見た。手を髪に当て、前腕の内側に頬を押し当てて快感に堪える切ない表情、背中をしならせ波打つ上体の動きに合わせて揺れ動く丸い巨乳、円を描くように回りながら呼吸とともに乱れる腹部の悩ましい動き、女は、こんなにも快楽に貪欲になれるのか。
「うう、うーっ、おおーっ」
浜本は獣じみた声を出し、茉琳の腰の肉を掴むと腰を突き上げて、煮えたぎった肉壺の中に欲棒を突き入れる。それだけでは飽きたらず、上体を起こすと茉琳を抱き止め、体を入れ換えて組み敷いた。
遂に堰を切った浜本のオスの欲望の奔流に、茉琳は抗するすべもなかった。耳元で荒々しい息遣いが聞こえたかと思うと、メリメリと音を立てるように固い肉剣が蜜壺の中に分け入ってくる。熱い愛液の中でまとわりつこうとする肉襞をこそぎ落とすかのように、それは激しい勢いで抽送を始めた。
「あ、あ、あうっ」
悲鳴を上げて逃れようと身を捩った茉琳だが、すぐにその身も心も押し寄せる快感の津波に呑み込まれてしまう。いっぱいに躯を開き、膨張した乳房を揺すってその快楽に身を委ねるしかなかった。
浜本は人妻を歓ばせているという自己満足感に浸りながら、必死に抽送を続けた。背中に回された茉琳の手が、浜本の肌に爪を立て、更に力がこもってくる。それは確実に絶頂が近づいているしるしであった。