壁時計-21
「さあ、ここもよく見せて」
気がついたら、夫が茉琳の脚を持ち上げるように広げているところだった。腰もつられて宙に持ち上がる。愛液が滴ったあとが幾筋も糸を引いたようになっている太腿のあわいが惜しげもなく夫の目の前に晒された。興奮して充血し、盛り上がった花園の土手の奥深くに夫の視線が突き刺さるのが、目を閉じていてもビンビンと感じる。新たな熱い淫液が蜜壺の奥からジワーリと湧き上がってきた。
「ああっ、くっ、くぅーっ」
粘膜と粘膜が擦り合う感触、赤く濡れ光る媚肉をザラザラとした舌で舐め上げられる感触に、茉琳は全身を突っ張らせた。愛妻の太腿にしっかり腕を巻きつけ固定している夫は、決して女陰から口を離そうとはしない。手指を動員して、大胆に花園の入口付近を踏みしだいた。ビク、ビクと震えながら、茉琳は高く低く、尾を引くような叫び声を上げ続ける。それに、ジュルジュル、チュパチュパという淫汁をすする音が重なった。
「すごいよ。こんなマリン、見たことない」
顔を上げ、口の周りを妻の愛液まみれにした夫が感嘆する。茉琳は胸を大きく波打たせ、裸身が宙に浮いたように手足をふわふわと動かした。夫は両膝をついて妻の脚の間を前に進むと、両手を大きく広げる形でついて、恍惚に震える顔を上方から眺める。
「可愛い顔してるね、マリン」
夫がそう言ったとき、茉琳は手で夫の腕をたぐり寄せるようにして、何事かを言いたげに口を動かした。しかし、声にならない。
「うん?」
夫は腕立て伏せをするように腕を曲げて妻の唇近くに片耳を寄せた。茉琳は片手を夫の背中の脇腹寄りを這わせ、腰の後ろに来ると、それをグイグイ自分の腰に押しつけようとしている。そして、苦しい息の下から
「来て……来てぇ」
と囁いていた。
夫は愛しさの余り、そう言う妻の唇を唇で塞ぎ、貪るように舌を突き入れた。
「む、んぐ、おおぅ」
圧倒的な挿入感に腰から躯全体へと大きなうねりが生じ、一瞬呼吸困難になった茉琳はふりほどくようにして口を離すと、大きなよがり声を部屋に響かせた。ぐっ、ぐっと力強い夫の抽送で、躯が次第に最後の絶壁まで一気に押しやられていく。茉琳は頭の両脇あたりのシーツを鷲掴みにして、胸を反らし、腰を突き上げて夫の律動に応えた。右へ、左へ、上半身を捩って快感に耐える茉琳の姿は、夫の抽送にますます拍車を掛ける。片方の乳房を掴み乳首をベロベロと舐めたあと、夫はこれ以上はない高みへと疾駆していく。
「ああ、ああ、うくっ」
それまでとは違った大きな声がしたかと思うと、茉琳の蜜壺の中へ熱い精液がどっと放射された。媚肉の中に夫の種が渦巻くのを感じて、茉琳は感極まった。射精してからなおも続く欲棒の突進を受けながら、茉琳は躯をブルブル硬直させながら絶頂の直中を飛翔していった。
心地よい快感の余韻に浸りながら、二人は抱擁を繰り返し、汗と淫汁が混じった液を互いの躯になすりつけ、ふざけあった。いつの間にか、部屋の外には暗闇が迫っている。不意に、茉琳はまだ火照る柔肌を夫に押しつけて言った。
「ボンボン、結婚しているのに他の人と寝る私で、いいの?」
夫は茉琳の腋の下に腕を通し、躯を引き上げ、額を寄せた。
「マリンはいつでも、僕の可愛い女房だよ」
「んー、もう、ボンボン、好き好き」
茉琳は夫の頬にキスの雨を降らせた。妻の攻勢を受けて、夫はゴロリと仰向けになり、茉琳はその上に乗っかかる形になった。
「あーあ」
甘いため息をついて顔を上げた茉琳は、けだるそうに髪を掻き上げる。
「お腹空いちゃった」
「この、食いしんぼ」
ボンボンは声を上げて笑った。そのとき、ベッドの上方に掛けてある壁時計がボーン、ボーンと鳴り始める。二人は結婚祝いに知人からもらったその時計を見上げ、しばし耳を澄ました。茉琳には、その時計が、ちょうどその時から新しい時を刻み出したように思えた。