壁時計-12
「シートを下げて」
茉琳はズボンの上から軽くそれをしごくような動作を見せる。箕田は黙ってうなずいた。
箕田がシートを下げる間に自分のシートベルトを外した茉琳は、運転席の箕田のベルトを外し、ジッパーを引き下げた。やがて茉琳の指に包まれて現れた箕田のそれは、生まれたばかりの子馬が必死に立ち上がろうとしているさまに似ていた。
「カチンカチンにしちゃおうかなー」
妖艶とした笑みを浮かべて、茉琳は肉棒を握った手を上下にしごきながら、朱唇を近づけていく。
間もなく、ジュル、ジュルジュルという派手な音が車内に鳴り響き、箕田は余りの快感に、シートに体を押しつけるようにして身を固くした。口をダラリと半開きにして、顔をゆっくり左右に振っている。
茉琳は狭い車内の隙間に身をねじ込むようにして、吸根作業に熱中した。しゃぶっているうちに、それは剛直となり、その先端からは絶えず樹液が浸みだしてきた。茉琳は口から離すと、間近にその状態を確認し、ハァッと熱い息を吹きかけた。
「すごぉい。こんなに立派になっちゃった」
茉琳は瞳をキラキラさせて箕田を見上げる。
「後ろに来てくれ」
箕田はそう言うと、ドアを開け、腰を折ってまるで老人のような格好で車外に出ると、後部座席に転がり込む。続いて茉琳が反対側から後部座席に乗り込んだ。二人は各々前にあるシートを今度はギリギリまで前に移動させ、いくぶん広がった空間の中で固く抱き合う。熱い接吻を交わしながら、箕田の手は再び茉琳のスカートの中へと這い入っていった。
「あ……」
パンティの上から女の敏感な部分を撫で上げられ、茉琳は思わず小さな悲鳴を上げ、箕田の首にかじりついた。箕田はその耳に強く息を吹きかけながら囁く。
「下、取っていい?」
茉琳は箕田の肩に顎を押しつけるようにしてうなずく。箕田は体を丸くちぢこませるようにして床に座ると、まず茉琳の靴を脱がせ、それから両手をスカートの中に突っ込み、パンティの縁を掴もうと指をもぞもぞさせる。その感触が意外と気持ちいい。ようやく縁を掴み、引き下ろそうという箕田の動きに合わせて、茉琳は両手を突っ張らせて腰を浮かせた。
茉琳のパンティを剥ぐと、箕田は欲望の赴くまま、両脚をM字に開脚させた。しかし、肝心の花園の部分はよく見えない。箕田は、まず手でそこを探った。たちまちその指先は熱い溶鉱炉の口に達し、どろどろに溶けて流れる愛液にまみれて濡れ光り出す。次は見当をつけて顔を近づけていく。かなりきつい体勢になる。
「うう……う」
茉琳は小さく喘ぎ声を漏らした。男の舌が不規則に女陰とその周囲の肌にチロッ、チロッと当たる。ちょうどいい具合に肉欲がかき立てられる愛撫の仕方だ。茉琳は小刻みに躯を揺すって箕田の舌の動きをアシストしようとした。
しかし、その愛撫は長く続かなかった。疲れたのか、あるいは茉琳の反応が鈍いと思ったのかも知れない。箕田は顔を上げると茉琳の躯を横に倒し、片脚を肩に掛けて座面に片膝をつき、のしかかってきた。狭い檻の中に閉じこめられたように、躯のあちこちが何かに圧迫されている感覚、そしてそれを圧倒するかのように、男根の挿入感が茉琳を襲う。
「はうぅぅ」
茉琳は全く新しい肉棒の動きに感じて声を上げた。不自然な姿勢を取らされているせいか、いつもとは異なる角度、深度で抽送されている。箕田の肉弓の反り具合とあいまって、蜜壺のある部分の肉襞だけが特に強く擦られている感じがした。いったんそれに気づくと、その感覚がとりついてしまって離れない。だんだんよくなっていく。
そのとき、箕田の肩に掛かっていた茉琳の足が外れて、ドアにゴン、とかかとがぶつかった。その拍子に、意図せずして二人の肉体が離れてしまう。自分の顔をのぞき込む箕田に、茉琳は首を捩らせたまま、「んふふふ」と笑いかけた。
箕田は後部座席の上で、茉琳を四つんばいにさせようとする。茉琳は顔を上げたときに、車のガラスが熱気で少し曇っているのに気がついた。少し恥ずかしくなり、茉琳は急いで頭をシートの座面近くまで下げた。相対的にお尻を高く掲げる姿勢になる。
箕田は茉琳の腰を掴んだ。しかし、すんなりと次に歩を進めることはできない。狭い空間の中で、躯を重ねようとにじり合う男女の姿は、どこか動物的であり、どこか滑稽だった。箕田は茉琳の片方の膝をシートの座面から外し、自分も片脚を伸ばしてフロアで支える姿勢を取った。
二人は斜めに傾いた後背位で結合した。箕田は前のシートのヘッドレストを腕に抱きかかえるようにして身を支えると、抽送運動を始めた。頭をドアに押しつけられる格好になった茉琳は、これ以上首がねじれないように両手でドアを押し返した。窮屈な姿勢を取らされ、肉壺のいつもと違う部分を男根で擦られて、茉琳の性感は高まっていく。
「んふ、ああ、ああ」
背中を弓なりに反らせて、茉琳は高い声を上げた。
「ああ、締め付けてくるよ、君の膣内(なか)が」
茉琳の頭の上から、ハア、ハアと息で途切れながら呼びかける箕田の声がした。同時に、下から乳房をガシッと掴まれる。
「はあ、いい、それ、いい」
茉琳は手の甲にこめかみを押しつけ、上半身を左右にブルブルと振る。箕田は開いた片手を腰に回し、茉琳の躯を手元に引き寄せた。そして、再び激しく腰を律動させてバックから責め立てる。