HAPPY LIFEH-2
「お前さぁ、なんで今日休まなかったんだよ?っつうか病院行け」
「だって明日から桜栄祭じゃん。今日が一番忙しい日なのに休んでられないよ」
机につかまりながら立上がり、歩きだそうとした瞬間…
フワッ
体が一気に軽くなった。
雄大に軽々と体を持ち上げられ、奥にあるベッドに移動した。
その間頭は真っ白で、何が起こっているのか理解できなかった。
「あのさ…」
雄大の声を聞いてみるみる顔が赤くなる。
「頼むから今日はここでおとなしく寝てろって。こんな体じゃできることもできないだろうし、こっちだって仕事頼みにくいし。明日香の分はみんなでフォローするし、何かあればすぐ連絡するから。…な?」
「……うん」
「じゃぁ、また様子見に来るから」
雄大は今まで見たことのない優しい笑顔を見せた。
額に乗せてくれたタオルが冷えて気持ちいい。雄大のお陰で安心して寝られそうだよ、、、
目が覚めるといつの間にか雄大が隣りのベッドに座って本を読んでいた。カーテンは個別に仕切られるように付いているが、そこだけは開いている。
「いつからそこにいたの?」
「30分ぐらい前から」
読んでいた本を静かに閉じると、寝ている私の額に手を置いた。
「だいぶ下がったみたいだから大丈夫だよ。でも一応病院でみてもらった方がいいかもな」
「うん」
なんでかな、すごく心の中がホンワカして居心地いい。すごくあったかい気分になれる。
「帰ろう、もうこんな時間だし」
え?!こんな時間って?
慌ててケータイの時計を見ると、もう5時をまわっていた。
「うそ?私こんな時間まで寝てたの?」
「きっと疲れてたんだろ?昼間様子見に来た時も、ぐっすりだったしな」
「……」
「お前、寝言いってたぞ」
「はぁ?!うそ、そんなの知らない!」
「当たり前だろ。寝てんだから」
「何て言ってた?」
「ふふっ…教えてやんねー」
「なんで?ちょっと教えてよ!」
「そんなのオレの口から言えるかよ…」
「え〜」
(明日香の家に着くまでこのやり取りは続いた。本当は寝言なんか言っていないのも明日香は何となく気付いていたのかもしれない。でも俺は、こんな些細なやり取りがすごく幸せに感じた。いつまでもこうしていたいと思った。こんな気持ち絶対気付いてねぇだろうな、アイツ)
「ちょっと待ってて、すぐ取って来るから」
そう言い残して、私は急いで家の中に入った。千栄先輩に本借りてて、家まで返しに行くって言ったんだけど、「お前はおとなしく寝てろ。オレが代わりに渡してやる」って言われちゃって。