嘘と約束-3
きっと大抵の恋人同士なら同じように思うはず。
『相手のために、何かしたい。』
珍しく早起きをして、家族は驚いていたけどお弁当をせっせと作る。
もちろん、2人分。
「昼休み、屋上で待ち合わせしてもいい?」
智哉さんを覗き込む。
突然の申し出に彼は、ぱちくりと目を瞬かせたが「ああ。」と少しそっけなく答えた。
もしかして何か用事があったのか?
不安になり聞いてみるが
「いや、平気だ。」
そう言って微笑んだ。
さっきのそっけなさは気のせい?首を傾げながら昼休みを待った。
昼休み、2つのお弁当を持って屋上へ上がるとすでに智哉さんはいた。
喜んでくれるかな。
僅かに期待をしつつ声を掛ける。
「あの・・・。実はね・・・。」
「わかってるから、いいよ。」
あたしの話を最後まで聞かず、視線を下に落とし智哉さんは呟く。
え・・・?わかってるって何?
「今日で別れるってことだよな?」
は・・・?思いもよらぬ言葉に声を出すこともできない。
「だって、言っただろ?3日間だけ付き合ってって。覚えてるんだろ?」
何それ・・・何それ・・・。
頭がくらくらする。
神様、これは嘘を付いていた罰ですか?
あたしは・・・酔ってそんな約束をしていたの?
じゃあ、この3日間の優しさは・・・言葉は・・・。
3日間だけだから、智哉さんは付き合ってくれたの?
「3日間だけだったけど、ありがとうな。杉本さん。」
皆に見せている口角を上げるだけの笑顔。
ショックだった。そんな笑顔を見せられて・・・。
やはり、あたしのことなんて何とも思ってなかったんだ。
こんな簡単に別れられるくらいなのだから。
そう思っていたらだんだんと苛ついてきた。
「・・・っによ、それ!」
自分がいけないのはよくわかってる。
「そんなの・・・覚えてないっ!」
突然のカミングアウトに智哉さんは目を見開いて驚いている。
おまけにこんな言い方、考え方逆ギレもいいとこ。
でも・・・
「たった3日間だったら、こんなに好きにさせないでよ!」
一度溢れてしまった思いは留まるところを知らない。
「何よ、終わった途端また他人みたいに名字で呼んで!」
涙がぼろぼろ溢れる。
「最っ低!」
・・・最低なのは自分なのに、智哉さんに当たってしまう。
そのまま踵を返し、その場から立ち去ろうとした。
「待てよ!」
腕を掴まれる。
振りほどこうとしても強く握られてその手を振りほどけない。
「離してよぉ・・・。」
智哉さんを見上げて訴える。涙で視界がぼやけてしまう。