逢瀬-1
「もし、あの人の言うことが本当なら、貴方はどうする?」
紅い髪の少女の呟きが、聞こえる。
楽しそうな、だけど悲しそうな声。
その顔は陰に隠れて、ここから表情は見えない。
「どうもしない」
どうも出来ない。
もう、戻れないのだから。
言葉が全てではないと気付いたのは、全部終わってしまった後だった。
君は友達だ、と。
裏で、色々と言われているのは知っていた。その中心が、君だということも。
全部、知っていた。
裏切りと思ったことはなかった。
きっと、自分も何処かで君を憎んでいたから。そんな自分を知っていたから。
君は友達だ。
いつもそう、信じていた。
初めは死んだことに気付けなかった。
ただ、気付いたらそこにいた。
少女が目の前に現れて、ようやく全てを知った。
深くて暗い場所。
だけど暖かい場所。
全てが偽りだけど、安らぎを覚えることが出来る場所。
書き込まれた、小さな願い。
ちょっとした気紛れが残した、一言。
「あの人を消して下さい」
殺人依頼は現実となって。
そして、自分は死んだ。
「冗談だったのに」
すれ違うことが悔しくて。傍にいられないことが悲しくて。
だからああ振る舞っていた。
だからあんな書き込みをした。
それを告げて、護るための……傍にいるための口実を作りたかっただけだった。
現実になるなんて、全く、思っていなかった……。
「ずっと、好きだった」
その言葉が、偽りか。
そんなのはどちらでも良かった。
もう、全て終わったこと。
「最後に伝えとく」
幻の自分。
存在する君。
一瞬の交差。
「私も君が好きだよ。これからも、ずっと」
もう、ここに自分はいない。
自分は消えゆく存在でしかない。
だから、覚えていて……なんて言わない。
過去に囚われて欲しくはないから。
「ただ、忘れないで」
君は、私の友達だ。
それだけは変わらずに。
流れ落ちた涙は、風に消される。
そして彼女は、微笑んだ。
今、最後の逢瀬。