かっちゃん-5
「明日になったら…オイは佐賀からいなくなってしまうばってん、永尾さん…オイのことば忘れんでね。」
そう言うとまたかっちゃんは黙りこんだ。
「なんか…ちゃーがつかぁ…
(恥ずかしいって意味です)
ばってん、私はかっちゃんと出会えてがばい嬉しかよ。私のことも忘れんでね。約束だよ…。」
「うん…。約束ばい……。」
私の目からスーッとと音を立てずに涙が流れた。
かっちゃんもずっと涙をこらえていた。
そのあと私達はしばらく黙って空を眺めて、夜になる頃にかっちゃんは「それじゃあ、そろそろ帰るけん…。」と言って去っていった。
私はその後福祉の専門高校に行き、ホームヘルパーの職につき、大人になった。かっちゃんの行方やその後の人生は知りたくても知れずのままだ。
だけど私は今でも忘れない
輝いていたあの人のことを
大好きだったあの人のことを
ねぇ、かっちゃん…
あなたはまだ私を覚えていますか…?
《おわり》