かっちゃん-4
陸上選手にとって、5000mは責任重大であり、かつ地獄のような競技であることは私も重々承知だった。奪われていく水分と体力と戦いながらも、確実に自分のポジションとスピードを保持しなくてはならない。そして、その精神地獄は途中離脱が許されない。かっちゃんは死ぬ気で走っていた。
最後の一周を迎えた時、みんなかっちゃんに向かって叫んだ
『かっちゃん!!ファイト!!ラストばい!!頑張れ!!』
私も悔いのないように、みんなの最後の代表として走ってるかっちゃんに叫んだ
「負けるな勝志ぃーーー!!!」
その声が届いたのか、かっちゃんはスピードをさらにあげて、全力で走り出した。
ついには3位を走っている選手と並びだした。
「らぁァァァッ!!」
最後の20m、かっちゃんは声をあげてアキレス腱が切れそうなくらい全力を出して走った。
そしてゴールに届く瞬間、ついに並んでいた3位の選手を追い抜いた。
わずかな差でかっちゃんは3位になったんだ
みんなは飛び跳ねながら喜んだ。
もちろんその先の九州大会には出れないけど、このかっちゃんの活躍は本物だった。
その後、私達陸上部は最後のミーティングを夏の鮮やかなまでの夕方の下で行った。そして、みんな泣きながらそれぞれと握手を交わして競技場を去って行った。
かっちゃんは競技場の噴水にあるベンチに一人座って、じっと空を見ていた。
私はかっちゃんの隣りに座った。
「頑張ったね…かっちゃん。」
かっちゃんは私のハチマキをバッグから取り出して渡した。
「………一位にはなれんかったけど、これでよかったとかな?」
「うん…。最高の思い出になったけんさ。かっちゃんはやっぱりスゴかよね。」
私はモジモジしながら言った。
かっちゃんは少し黙りこんで一つふぅっとため息をついてからまた口を開いた。