手紙〜言えなかったさよなら〜-3
俺は脱ごうとしていた靴を放ってバアチャンの所にかけつけ、バアチャンの腕を引っ張った。
「バアチャン!!大丈夫と!?」
大丈夫とバアチャンは表情でサインを送った。俺が分かったと手離すと、バアチャンはやはり壁に手をつきながらフラフラと廊下を進んだ。だが、数歩あるくと、バアチャンはバタンと廊下に倒れた。俺は急いで駆け寄り、バアチャンを起こした。
「ホントに大丈夫と!?」
と聞き直したが、バアチャンは大丈夫と言ってのけた。俺はとにかく危ないと思い、バアチャンがちゃんと座れる場所に着くまで付き添った。
この日交わした会話が…
俺とバアチャンの最後の会話だった
なのに俺はそんなことしかできずに
バカなヤツだよね
次の日の朝、俺が目を覚ました頃には家中が大騒ぎだった。バアチャンが目を覚まさないので、救急車で運ばれたんだ。
ウソだろ…
そう思うしかなかった。きっと誰もがそう思ったに違いない。それはまさに、ウソのように早い出来事だったから…
病院に向かった頃には、バアチャンはすでに脳内出血で集中治療室にいた。奇跡でも起きない限り意識が戻ることはないと医者が言っていた。俺は頭の中が混乱しておかしくなっていた。バアチャンが運ばれてからずっと付き添っていたジイチャンはとても深刻そうな顔をしていた。この時ジイチャンには二つ選ばなきゃいけないことがあった。一つはこのままバアチャンを静かに死なせること、そして、もう一つは奇跡を信じて無理矢理にでも生かすこと。ジイチャンは後者を選んだ。俺もそうしてほしかった。死ぬのはありえないし、奇跡を信じたかった。
それから一、二ヶ月経った
いつものように俺は部活をしていて、この日にまさかこんな知らせが来るとは思わなかった。
兄貴が急に学校にやってきて、スパイクを履こうとしていた俺にすぐに着替えるように言った。