oneシーンU-1
ガタン―…ガタン―…
今日はやけに電車の音が虚しく響く。
「まぢでー?!それ、ありえなくない?!!……キャハハハハ」
「……………うるせぇよ」
同じ車両内でバカ声をあげる女子高生に苛立つ。
こんな気分なのはすべて自分のせいなんだけど…。
最近不調続きだ。
良いことなんか一つもない。
バスケの試合ではミスするし、シュートは入らないしで崖っぷちレギュラー。
彼女とは一ヶ月前別れた。
友だち関係も何やら複雑なことになっている。
学校生活はムカつくことだらけだ。
まさに精神的に病んでいた。それに便乗するかのように窓は激しい雨に打たれて景色がうまく見えない。
「あークソっ!」
苛立ちと落ち込み…。とにかくマイナスオーラ全開な今。
俺の周りの空気はすばらしく淀んでいるだろう。
そんな時だった。
可愛らしい…と言うより色っぽい声が俺の名前を呼んだ。
「尚人(ナオト)?」
声のする方へ顔を向ける。
「あ、やっぱり!」
「…………?」
俺の記憶の中にこの顔に該当する人物の名前が思い浮かばず、思わず首をかしげる。
「うそっ、まさか忘れた?!」
「………千春(チハル)?」
「そうっ!あたしって存在薄かった?」
「いや、まさか!」
手に握られてる携帯に貼ってある『CHIHARU』というシールが救いになった。
俺が千春を忘れるはずなどなかった。存在感なんてありすぎるほどだった。
ただ、千春があまりにも美人になっていたから分からなかったんだ。