oneシーンU-3
「あっははははは!あんた、そんなことで悩んでるの?弱いな〜」
おかしそうに笑いながら言う千春の言葉に俺は目を丸くした。
「深刻そうにしてるから何かと思えば……ふふっ、ばぁーか」
あぁ、千春だ。
美人なくせに中身は結構おおざっぱで口が悪い。嫌いな先輩に対しては『どけよ、邪魔だろ』なんて言ってのける大物だ。
「笑うなよ。結構ヘコんでるんだ」
「男だろ?!そんなくらいで悩まない!」
「そんなくらいって…俺サッカーでうまくいかないの初めてなんだよ」
「スランプの時期は誰にだってあるよ。あたしなんて彼氏に浮気されるし、変な噂流されるし、ストーカーされるしで散々なんだから!」
笑いながら言う千春はすごいと思った。
いつの間にか雨は止んでいた。
「散々だな」
「まぁね」
「辛くない?」
「悩んでる暇あったら、とにかく何か行動起こすからね」
「…男前だな」
「おうよッ!」
歯をみせながら愛らしく笑う千春を見てたら、何だか気分が晴れた。
その後は中学の頃の話で盛り上がった。
「そんなこともあったな〜」なんて懐かしみながら。
本当にばかだった。
小さすぎる。
こんなの何てことない。
話したのが千春でよかった。
笑い飛ばしてくれるような女でよかった。
単純すぎるかもしれないけど、人に話すと案外すっきりするもんで、いざ口にすると急に小さいことに思えたんだ。
こんなことで悩んでた自分が今更ながら恥ずかしくなった。