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しにがみハート
【コメディ 恋愛小説】

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しにがみハート#7-1

 そろそろ寒さを、直に感じるようになってきた。
「…寒いですね…」
「…あぁ」
 学校への通学路。絢芽と孝紀は歩いていた。冬の朝は、やたら寒い。それに追い打ちをかけるように天気は雲一つない快晴。太陽が当たって暖かいんじゃないか、と思われがちだが、これが結構、寒いのだ。
さすがの絢芽も、テンションが上がらないらしい。
「今日、理人くんからお知らせがあるとか」
「そういやぁ、言ってたな」
昨日の夜、やたらにテンションの高い理人から、二人揃ってメールを受けたのだった。
「まぁ…期待しましょうか」
「とりあえずな」
「手ぇ…繋ぎますか」
「…おぅ」
いつもとは違い、朝のテンションの低い絢芽も、何かと新鮮で孝紀は好きだった。
死神は、朝に弱いらしい。


■■■


 ガラガラ…と、二人でドアを開けると、理人が仁王立ちで立っていた。
「ふふふ…遂に!!!遂に俺にも春がやってきたんだ!!」
『……』
(帰るか?)
(クラス間違えましたかね?)
 ガラガラ…と、教室のドアを閉めた。
「さて、俺達のクラスはっ…と」
「…やっぱりここですね」
「だよなー…」
やっぱり、自分のクラスはここだ。
「開けるしか無いんですかね」
「あんまり開けたくはないがな…」
そしてまた、ガラガラ…と教室のドアを開けた。
「俺にも遂に来たんだ!!彼女が!!」
『……は?』
跳びはねて喜ぶ理人。
「出来たんだよ!?彼女が!!」
「マジか!!」
「マジだ!!」
「見てみたいですね〜」
「そろそろ学校に来ると思うんだけど…」
三人で理人の彼女を待つ。
数分後、教室の後ろのほうのドアが開いた。
「理人くん、おはよう」
「おはよう!!」
ふんわりカールを施し、全体的にふわふわとしてそうな美少女が入って来た。
(む…この人…)
直感で絢芽は何かを感じたが、何も知らない理人の前でそれを言う訳にはいかなかった。
「この方、俺の彼女!!」
「はじめまして、成和 姫雪といいます。ひゆき、と呼んで頂ければ」
姫雪は、ぺこりと頭を下げた。
「…では、私はクラスが違うので…また後で、理人くん」
「おぅ、じゃあまた!!」
ひらひらと手を振ると、自分のクラスへ戻って行った。


■■■


 昼休み。
 絢芽と孝紀は、教室の片隅で弁当を食べていた。
「……むぅ」
「どうした?絢芽」
理人の彼女、姫雪と出会ってから、ずっと絢芽はこんなだった。
「姫雪さん…おかしいです」
「どこが?…結構良さそうな子だったぞ?潔白そうで」
「…あの娘、天使ですね」
ぶふっ!!
思いもよらない一言で、孝紀は思わずお茶を吹き出す。
「…私が死を操るならば、姫雪さんは生ですか…」
「…それは、大変なことになってるのか?」
「や、単に真逆なだけですよ。気にしないで良いんですよぉ〜」
(結構、まずいんですけどね…?)
「天使かー…あー…どんどん俺が非現実的な世界に引きずり込まれていくぅ…」
まぁ、普通じゃ混乱するだろう。


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