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僕の、僕に対する、僕のための背徳
【SF その他小説】

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僕の、僕に対する、僕のための背徳-1

 赤を基調とした美しく豪華な調度品で彩られたこの部屋。それ程広くは無いけれども、僕一人が生活する分には何の不自由も無い。食べる物も着る物も、この国で最高の品ばかりだ。
 なのにこのぼんやりした気持ちは何だろう。「僕は幸せなんだろうか」などと、今みたいに座って机に肘を付いている時なんてついそんな事を考えてしまう。そもそもこんな事を考える事自体が、僕に許されるはずも無いのに。
 目の前に設置されているモニターに目を遣る。僕の気持ちのように白くぼんやりと光る画面には、美しく豪華な調度品で彩られた部屋が映し出されている。そしてその部屋には、ベッドに横たわる一人の少年。小柄で細く、少し長めの金髪が額にかかっている。彼の頬は白く、もはや青白い。そのせいでせっかくの整った顔も、全く魅力的に見えない。
−どんどん悪くなってるみたいだ・・・。
壁の掛け時計で時間を確認し、黄緑色の表紙のノートへ今の時刻と彼の簡単な様子を書き込む。
『午前10:32 ひどい顔色。』
前回書き込んだ時間を確認すると、丁度30分前だ。
『午前10:02 いつもより3錠多く薬を服用。』


 30分間隔でノートに書き込む習慣なので、もう時計で計らなくても30分を感じる事が出来るようになった。黄緑色のノートを机の引出しに片付け、次は赤いスケジュール帳を取り出す。中を見て、今日の予定を確認する。もちろん彼の予定が書かれてある。
−新しくオープンした王立バラ園の視察は今日も無理だな。

 もう一つの青いスケジュール帳を取り出す。これは、僕の予定だ。今日は博士の健康チェックが10:50〜11:00までの10分間あって、11時から勉強の時間・・・。僕には毎日やる事がたくさんある。 勉強の始まる11時までは、モニターで彼の様子をチェックしたり、彼の今日の予定を確認したりする。5時までは勉強。教科も世間一般の基礎的なものから、社会の流れや、国を統治する者の心構えまで様々だ。勉強が終わってからは、またモニターで彼の様子を30分置きに確認。9時から12時までは、彼の読んだ本や映画、テレビを見る。この時間が一番好きだ。それから彼の今日一日の行動を振り返り、眠りにつく。
 彼のスケジュールには色んな事があるのに、僕のスケジュールは毎日この繰り返しだ。例外はない。この部屋から出ることも許されない。博士や先生、身の回りの世話をしてくれる人以外は誰にも会えない。もちろんモニターの彼と会う事など、一生許されない。


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