find out memory-5
「大丈夫、答えは歩の中にちゃんとあるはずだから」
と言って絵実は席を立った。
「行くのか?」
絵実はコクンとうなずきゆっくりと出て行った。
「自分の中に、ねぇ」
俺は絵実の座っていたイスに座り、目を瞑る。
「・・・・」
「歩ってさ、夢とかあるの?」
去年の夏、学校の帰り道に織華がいきなりこんな事を聞いてきた。
「夢?」
「うん、夢」
「そうだなー」
実際まだ夢なんか決めてはいなかった。高校だってただ入れるところに入っただけだし、これからの人生なんかまったく考えてもいない。
「ないな、特に」
「えー、つまんないな」
「つまんなくて悪かったな、お前はどうなんだよ」
「私は決まってるよ。なにより大切な人と一緒にいられればいーもん」
「それ・・・夢か?」
「夢だよ、立派な。別に将来何になりたいとか聞いてないからいいのよ」
まぁ確かにそうだが・・・なんか違う気がする。
「大切な人とずっと一緒って、そんな事あるのかよ。人生出会いあれば別れあるってもんじゃね」
「それこそ夢がないんだよ。夢の中なんだから何でもいいの!ほら空飛びたいとか、銀行襲ってみたいとか、なんなら世界征服なんかでもいいんだから」
「世界征服ねぇ」
さすがに征服はしなくてもいいが。
「そんな夢ならあるかな、平凡に生きて、安らかに眠る。これが夢」
「うわっ、それこそ夢なーい、精神年齢何歳?」
「うるせーよ、平凡っていうのは結構難しい事なんだからな、お前こそ大切な人見つける事なんか難しいんじゃないのか?」
「確かに難しいこととは思う、でも案外簡単に見つかることだってきっとあるはずよ。私がその人のことを守りたいと思ったら、それはもう大切な人に値しているはずだもの」
「はーん、そんなものですか」
「絶対そう!」
織華は目を輝かせながら言い切った。