隣の王子様-1
「おい、ジュース買ってきて」
「…うぅぅ」
「…あれ、ばらしちゃうよ?」
「……いってきます…」
「あ、オレンジ100%のやつね。」
今日もわたしは彼にいいようにされています。
彼は隣の席の中田くん。
なぜわたしがこんなに彼の言うことを聞いているかというと、ある秘密を握られているから。
それは、わたしが彼の友達の大内くんを好きだということ。
ある日、そのことを友達と話しているのを聞かれてしまってから、彼とわたしはこんな関係です。
チャリッ…
「え?」
背後から伸びてきた指に、自動販売機の前に立っていたわたしは驚いた。
「お前遅すぎ。」
「ご、ごめん…」
ピッ
「中田くん!間違ってるよ…?
それ桃のジュースだよ?あれ?オレンジって言ったよね…?」
ピーチジュースを取り出す中田君。
「…やる」
「え…?で、でも」
「おれ桃きらいだし。捨てるよりいーだろ」
「…あ、りがと」
チャリッ…ピッ
中田君は今度はちゃんとオレンジのボタンを押した。
「ほら、教室帰るぞ」
「うん…」
…ほんとに間違えたの?
ピーチとオレンジのボタンはわたしだって間違えないくらい違うところにあるよ?
わたしたちは教室まで何も話さなかった。
「あー!裕香またピーチ飲んでる。ほんとに桃好きだね〜」
「…あ、…うん」
中田君はいじわるで、わがままで、自分勝手で、俺様で。
でも嫌いになれないのはどうしてかな…。