刃に心《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》-1
日ノ土動物園。世界の様々な動物達が見所で、老若男女問わずまずまずの人気の動物園である。
何故、動物園の説明なんかしたのかと言うと、皆さんならお分かりになられると思いますが、今日は動物園で疾風と楓はデートなのです。
《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》
◆◇◆◇◆◇◆◇
「何をしている疾風、置いて行くぞ」
午前9時。朝に弱い為、未だぼ〜っとしている疾風に向かって楓が言った。
今日の楓の姿は普段着の胴着ではなく、今時のファッション雑誌に出てくる様な格好。元々の素材が良いのでかなり似合っている。
ただ…その手には不審な布袋がしっかりと握られていなければの話だが…
「あ、ごめん」
それに対して、疾風は自分の格好などどうでも良いらしく、ジーパンと普通のTシャツの上にこれまた、どこにでもありそうな上着。
「う〜ん…」
それは兎も角、まずは背伸び。そして、ふあぁ〜っと大欠伸。最後に頬をパンッと叩き、目を覚ます。
「ほ、ほら、行くぞ」
楓は先程から握っては閉じ、握っては閉じを繰り返していた手で疾風の手をとった。
「こうでもしないと、はぐれてしまうではないか…」
言い訳を呟いて、楓は赤い顔のまま疾風の腕を引っ張っていった。
だが園内にはそんなに人数はおらず、はぐれることは…
───ギロッ!
すみません、いっぱいいます!人いっぱいです!だから、はぐれる可能性も高い!だから『黙らないと斬り捨てて、新しいナレーションに変えるぞ!』みたいな眼光はやめて下さい!マジで!
「…そうだ。はぐれる可能性も高いからな」
楓はそう言ってプイッと正面を見据えた。
ふぅ…
「あのさ…そんなに急がなくてもいいんじゃない?」
「そ、そうか?」
楓は急ぎ足だった歩調を緩め、疾風の横に並んだ。だが、握った手を緩めることはしなかった。
「じゃあ、何処から見に行く?」
「とりあえず、パンフレットの順序で行けば良いのではないか?」
「そうだな。それじゃあ行こう」
「ああ♪」
楓がチラッと疾風の横顔を覗き、嬉しそうに笑った。