刃に心《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》-6
◆◇◆◇◆◇◆◇
「コードネーム『CHINPIRA's』沈黙」
「プランβ、ミッションオーバー」
「くっ…なかなかやるな…よし、最終手段!プランγ始動!」
「ヨッシャア!」
彼方が大声を上げた。そして意気揚々と戦地へ赴く。
「コードネーム『MOTENAI』出撃。プランγ始動を確認」
「『MOTENAI』の発信機と音声繋いで」
「ハッ」
───ガガッ…
耳障りな砂嵐の音が流れた。続いてザクザクと地を踏み締める音。
『確かに、知り合いが来るとデートはしにくいよな…特に鈍感な疾風なら一緒に周ろうとか言いそうだし…』
武慶は思った。モニターの『MOTENAI』と『KAEDE』の距離は約10m。
モニターの『KAEDE』の移動速度が上がった。
『貴様、何をしている!』
『あ、あの…その…』
『私の邪魔をするなァ!!』
楓の怒声とメキャという音が同時に聞こえた
ズザザザサ…と何かが地面を擦りながら滑る音。
その後、ガサガサと茂みに何かが突っ込んだ音。
『急に走り出してどうした?』
発信機からは新たに疾風の声。
『いや、何でもない。気のせいだったみたいだ』
『そうか』
足音が遠のいていく。発信機からの音声はそれが最後だった。
「………」
「コードネーム『MOTENAI』沈黙」
「プランγ、ミッションオーバー」
「今までで一番呆気なかったな…」
「くっ…手駒が無くなったか…仕方ない、全軍撤退!」
「コードネーム『MOTENAI』未だ沈黙。回収しますか?」
「死して屍拾う者無し」
「「ハッ!」」
「おいッ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
観覧車はその巨大な姿で佇んでいた。ピクリとも動く事なく…
『すみません。只今、観覧車の方は故障中でして…』
係員が申し訳ないといった表情で頭を下げた。
「そんな…」
愕然とした表情の楓。
「…どうしても動きませんか?」
『はい…今日中の復旧は無理かと…』
「どうしても?」
『はい…どうしても』
諦め切れない楓は食い下がる。
「仕方ないじゃないか。どうしようも無いんだし」
「うぅ…乗りたかった…」
疾風の一言で楓が肩を落としつつもようやく諦めた。
「何でそんなに乗りたかったんだ?」
「だって、せ───」
狭い個室で二人っきり…と言いそうになったが、慌ててその言葉を飲み込む。