刃に心《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》-5
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さて、疾風と楓は…
「俺はサンドイッチと紅茶。楓は?」
「私も同じで良い」
園内の売店前。12時となった為、昼食にすることにしたのだった。
「さてと…この後、どうする?」
サンドイッチを囓りながら疾風が言った。
午前中だけで動物園の方は大体見終わっていた。
「そうだな…」
楓がそう呟いて、一口紅茶を飲んだ。
「楓は行きたい所はある?」
「…観覧車」
たった一言だけ、楓は告げた。ほとんど聞こえない声だった。
「観覧車…でいいの?」
楓はコクリと頷いた。
この動物園は遊園地も併設されており、そこの観覧車は目玉の一つだった。
「…嫌か?」
不安そうに楓が疾風の顔を覗き込んだ。
「いんや。別に…ゴクッ…いいよ」
口に入ったサンドイッチを飲み込んで疾風は承諾した。
その時またしても…
「アニキ、アイツらです!」
先程のチンピラと屈強な男が数人。
「よくもまあ…俺の舎弟を」
アニキと呼ばれた男がボキボキと指の骨を鳴らしながら、疾風と楓に近付いてきた。
「「はぁ…」」
大きな、大きな溜め息が重なった。
「此所じゃ迷惑なんで…あっちにでも…」
昼食を食べ終わった疾風があまり人気の無い売店の裏手に男達を連れ出した。
「疾風、私も行こう」
急いで紅茶を飲み下すと楓もその後を追った。その手に木刀入りの布袋を握り締めて…
そして、数分後…
「他愛も無い」
「ったく…何なんだあの劇団員達は?」
疾風と楓が無傷で帰還。売店の裏で男達は仲良くお昼寝中である。
「まあ…観覧車に行こうか」
疾風と楓は大観覧車へと歩を進めていった。