刃に心《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》-4
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楓が木刀を納めたのとほぼ同時に一人の男が疾風達の前に現れた。
「おうおう!昼間っからイチャイチャと見せつけてくれるじゃねぇか!」
派手な柄シャツに金のアクセサリー。そしてサングラスと肩を揺らす歩き方。一昔前のチンピラだった。
「行こう、楓…」
「そうだな…」
二人は不快感を露にし、その場を立ち去ろうとした。
「まあ、待てよ!」
チンピラが楓の腕を掴んだ。
「な、何をする!離せ!!」
楓が言葉を発した瞬間。その横を風が通り抜けた。
楓が驚いて横に視線を向けた。チンピラの鳩尾に疾風の手刀が深々と刺さっている。雰囲気は先程までとは異なり、穏やかな瞳は刃の様に研ぎ澄まされていた。
「疾風…」
「楓、大丈夫?」
ぐったりとする男を壁に立て掛け、疾風が振り向いた。
「あ、ああ…」
「良かった♪」
疾風はにっこりと笑顔を見せた。途端に張り詰めていた雰囲気が崩壊する。
「それにしても…何だったんだアレ…?劇団員?」
近年、その数を減らした正当派(?)のチンピラだった。
「まあいいや。時間がもったいないし、次に行こうか」
「ああ…」
30分もあれば回復するだろう…
疾風はそう思って、パンダとチンピラを後にした。
「…普段からあの調子ならば格好いいのだがな」
「何か言った?」
「な、何でもない!一々詮索するな!」
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「コードネーム『CHINPIRA』沈黙」
「プランα、ミッションオーバー」
モニターの赤い光が動かなくなったのを確認したヒロシとユウが霞に報告。
「ちっ…使えん奴め…プランαからプランβに移行!!」
「「ハッ!プランβスタートします!」」
携帯で何処かへ連絡をするヒロシ。そしてパソコンを操作するユウ。
「おいおい…大丈夫なのか?その…『CHINPIRA』とやらは?」
武慶が心配そうに尋ねた。
「大丈夫よ。鍛えてるはずだし、知り合いの家系だから」
モニターを見たまま、霞が背後の武慶に言った。
『だけど…兄貴がこれほどまでとは…正直、役者不足だったみたいね』