刃に心《第5話・ミッション名─デートを監視せよ》-2
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その後方、約10数m。植え込みの影に5人の人影。
「フフッ…イイ感じじゃないの♪」
「くそぅ…疾風の野郎…楓ちゃんとラブラブになりやがって…俺なんか…瞬殺だったのに…憎い…憎いぞ…疾風ぇ!」
「彼方、五月蠅い」
霞と、連絡を受けた彼方、武慶、そして間宮兄弟だった。
「え〜、今回楓ねえさんと兄貴のデートということで皆さんに集まってもらいました」
霞が4人に今回の主旨を説明しだした。
「これから2人に様々なアクシデンツを引き起こして、反応を楽しもうというわけですが、正直それがどう転ぶか分かりません!もしかしたら、よりラブラブになるかもしれませんし、破局するかもしれません。ですが!私はここに宣言します!ただ面白ければいいのです!!以上!!!」
ガッツポーズで宣誓。辺りからパチパチ…ヒロシとユウのまばらな拍手が聞こえる。
「妹の言う台詞じゃないな…」
武慶が呆れたようにポツリと漏らした。
「次に業務連絡ですが…希早紀先輩は用事で来れないそうです。残念ですね、シイタケ先輩♪」
途端に武慶の顔が赤くなった。ニヤニヤと笑う彼方と口許に手を当て、さも愉快そうに武慶を見るヒロシとユウ。
「と、とにかく!あんまり無茶苦茶はするなよ!!」
赤くなりながら武慶が叫んだ。その声に疾風が振り向いた。
「「「「「やば」」」」」
慌てて茂みへと紛れる5人。
「どうしたのだ?」
「…いや、何でもない」
疾風はそう言って茂みに背を向けて再び歩き出した。ふぅ…と茂みから溜め息がした。
「危なかった…」
「隊長、これから二人は順序通りに進むようであります」
「如何なされますか?」
「プランαを展開。同時にプランβを準備」
「「ハッ。了解であります」」
踵を鳴らし、見事な敬礼で作戦を承る間宮兄弟。
「お前らは疾風の味方じゃないのか?」
「「我々は常に面白い方の味方であります」」
はぁ…と武慶の口から溜め息が漏れた。
「フフッ…楽しいデートにしてあげる♪」
霞が小悪魔的な笑みを…───いや、もはや悪魔そのものの笑みを浮かべた。その影の口が三日月に裂け、尖った尻尾がユラユラと揺れていた様に見えたのは気のせいだろうか……?
「壊れろ…壊れてしまえ…モテない同志を裏切る者は……ふふ…ふはは!ふははははははは!」
彼方は彼方でいっちゃった笑顔。
『すまん…疾風…俺にコイツ等は止められそうにない…』
心の内で親友に謝り、その背中に哀れみの視線を投げ掛けた。