I's love there?-18
あれから数日が過ぎた。翔太がハナと付き合いはじめたと、別れた次の日に涼子から聞いた。ハナはかなり感激していたという。そう話す涼子はすごくうれしそうだった。
私は、心に灯っているオレンジの光をあたためるべく、今日佐藤家の門の前に立った。手には手作りクッキー。昨日徹夜して、くどくど文句を言うお母さんに教わりながら作ったのだ。途中、何度も喧嘩しながら出来上がったそのクッキーは、見た目は不恰好だったけれど、ひとつほおばり、お母さんは上出来だ、と言ってくれた。そんな姿を見ていて、私は気がついた。お母さんは不器用なのだ、と。手先ではなくて、感情を表現するのが。
―そこに愛はあるのかい?―
心は鏡。曇った心で見ていたときには気がつかなかったことが、磨いて周りを見渡せば、いろんな形の愛情がたしかに存在していた。
磨いてくれたのはサリーちゃんの存在。そして、サリーちゃんを想う私の恋心。
『ピンポーン』
チャイムが家中に響き渡るのを確認し、しばらく待つ。
家の奥でバタバタと騒がしい音が聞こえて、私は緊張していた。
……でも。いくら待っても人が出てくる気配はない。
もう一度チャイムを鳴らしてみた。
……すると。
バタバタバタ
……バンッ!
どんどん足音が近づいてきたかと思うと、勢いよくドアが開いた。そのドアからは。
まず白い子猫が飛び出してきた。口になにやらくわえている。そして。ドアを開けた主はサリーちゃん。
「ちくしょー! マィ! 覚えていやがれ! 今度やったらただじゃおかねぇか…ら…。あ!」
やっと私の存在に気がついたらしい。サリーちゃんの顔がみるみる真っ赤になっていく。
私はというと。
負けないくらいに顔が真っ赤になって、持っていたクッキーをぼとりと落としてしまった。
こうして、私の人生二番目の彼氏はサリーちゃんになったのでした。