Marihuana-5
受け止めきれぬ現実
壊れていく理性
そして、大麻の誘惑
溺れていく体……
僕はその全てを感情のままに表現した。クラリアは、苦しんでいた。この音が心の奥にまで響いたのだろうか…。痛みをさらけ出すようにもがき始めた。
会場の目はクラリアに集まった。その者達は、彼女を見て、さらに涙を流した。僕はそれでも弾き続けた。
そして、クライマックス……
全く違う感情がホール中に広がった
そう……僕がここで表現したかったのは
悲しみではなかった
悲しみも、苦しも包みこむような
暖かいもの
それは春風に揺らぐ花のようなもの
常に同じ位置に、同じ形で存在しているもの
『兄の愛情』だった
育まずとも確かなもの
いつも一歩後ろにあるが故に、なかなか気付かないもの
だけど、一番自然に受け入れられる…
家族の愛情とは、そのようなものだ…
僕が鍵盤から指を離した時、会場から大きな拍手が溢れてきた。皆が感動していた。僕は丁寧にお辞儀をし、クラリアの席を見た。
彼女はにこやかに笑っていた
奇跡が起きたんだ
〈おわり〉