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真夜中のピストル、そしてキス
【同性愛♂ 官能小説】

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真夜中のピストル、そしてキス-4

4 「は…?なに、今の…」
「いいから、ホラ帰るぞ」
 これじゃあ、さっきと状況がまるっきり反対だな。
 克也は、さっきのキスからすっかり黙り込んでしまった。
『分っかんね…』しばらくして、そう洩らした。

「忍、自分から構うなって言ったんだろ。なのに、なんであんなのするんだよ?矛盾しすぎてて分かんねえよ!」
「克也があんな顔すると思わなかったんだよ!本気で迷惑なら会話もしない!それくらい気付け!」
「!ふざけろよ、てめえ!さんざん俺のこと避けてただろうが!」
「あんな事されれば誰だってそうするよ!学校じゃ普通に接してくるし!分かんないよ!なんでキスなんかしたんだよ!」
「分かるだろ!好きだからキスしたんだよ!それ以外になんの理由があるんだ!忍の方がわけ分かんねーだろ!」
「俺だってそうだよ!好きじゃなきゃキスしない!さっき気付いたってだけだろ!」


 そこで言い争いは途絶えた。
『は…?』

 お互い顔を見合わせて、同時に出た言葉だった。

「何ソレ。目紛るしい心の変化だな。馬鹿じゃねえ」
「そっちこそ屈折した愛情表現だな。クソみてえ」
「ついてけないわ」
「偶然だな。俺も同じ気持ちだよ」

 最後にお互い蹴り合って別れた。


 ふと夜に目が覚めた。


 窓から侵入者が入ってくるところだった。

「不用心。鍵掛かってなかった」
 侵入者は、そう言ってあの夜のように薄く微笑った。
「ついて行けないんじゃ無かったのか?」
「忍と同じで気分屋なんだ」

 侵入箇所に浅く座り込み、薄暗い部屋のなか後ろに満月を携えて話し出すその画は、映画のようにキレイだった。
 キレイすぎて、まるで夢の続きを見ている気分だった。

「なあ、知ってるか?満月の夜は殺人が多くなるんだ」
 窓外に靴を脱ぎ捨て、ゆっくりと近づいてくる克也が、寝物語を語るようにゆっくりとした口調で言葉を紡ぐ。
「人間の体のなかは世界一小さい海になってるんだ。だから潮の満ち引きの関係で、満月の夜は情緒不安定になるんだと…」

 侵入者はもう、すぐ傍にいた。

「…だったら俺が忍を欲しくなるのも、月の所為かな…」

 ゆっくりと、唇が重ねられた。

(狼男じゃない、フレディでもない、なんだっけ…?ああ、そうだ)

 吸血鬼に似てる。
 昔観た映画の吸血鬼だ。

「なあ、忍。昼間、俺のこと好きだって…言ったよな?」
「あ、ああ…うん」

 顔が、近い。
呼吸の音ですら聞こえてしまう。

「宣戦布告、覚えてるか?」
 俺の心臓にピストルを突き立てて、静寂の中に克也の低く澄んだ声が響き渡る。
「忘れるなんて…出来る筈ないだろ」
「じゃあ…してもいいか?」
 『何を?』なんて聞くほど俺は馬鹿じゃない。
「…勝手にしろ」

 素直に頷くなんて、悔しくて出来るかそんなこと。
 そんなこと、聞く方も聞く方だ。
そう思っていると、キスが落ちてきた。
始めは短くて、だんだんとその間隔は空けられた。
「…ん……」
 二回、三回と、キスは繰り返され、克也に乞われるまま唇を委ねていた。
長すぎるキスの後、ふいに唇が離れ熱を持った視線が絡みつく。
克也の唇が、首の方に移った。
 そのままどうすればいいか分からなくて、顔を天井のほうに傾けた。
「う…っん…、」


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