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■LOVE PHANTOM ■
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■LOVE PHANTOM■二章■-2

「いらっしゃいませ」
限りなく透明に近い色に、薄茶色がかったドアがぎぃっという音と共に開いた。
宝石店「らいら」と呼ばれるこの店は、この辺りでは知らない人はいないと噂されるほどの有名店である。三階建てのこの宝石店には、今日も若い女性から、少々歳をとった大人まで幅広い、数多くの客で入り浸っていた。
開いたドアの間から外の光と共に、黒く光ったブーツがすっと、音もなく店内へと入ってきた。中はうっすらと暖房がきいているのが分かる。入って来た客は一人で、黒装束に全身をかため、頭にはつばの広い黒の帽子を深々とかぶっていた。そして、そのつばの影に見え隠れしているのはあの冷たく深い瞳である。
「何かお求めですか?」
一人の店員が、突っ立ったまま動こうとしない叶に慢心の笑顔で言った。しかし彼は、まるで店員が目に見えていないかのようにして辺りを見渡している。
「あの、お客様?お求めのものがあればお連れしますが。」
店員は、負けじと彼の横についてまわった。
「お前は靜里を知らない。そんなもので俺の求めているものが分かるのか?」
「は?」
そう言うと、店員を後にして叶はガラス張りの台の中を見てみた。その中には、思わず目を覆いたくなるほどのきらびやかな指輪達がおいてあった。純金のもの、ダイヤの詰め込まれたもの、種類が豊富なことも勿論だが、どれも一つ一つ違う特有の輝きを魅せている。
だが叶は、何が気に入らなかったのか鼻を軽くふんと鳴らすと、おくのガラス台を見に行ってしまった。
「あいつは、こんなものは似合わない。もっとシンプルで純粋な色と形のものがいい」 叶は、口元に笑みをほんのり浮かべると昨日の靜里との出来事を思い返した。



「なぜ泣く?何かあったのか」
叶はそう言うと、靜里両手を再び包みこむようにして握った。柔らかな肌の感触が、叶を落ち着かせている。
靜里は、いつまで経っても止まろうとしない涙をごしごしと拭うと、叶の方を見て言った。
「大丈夫。・・なぜだかわからないけど妙に懐かしくて。なんか、こうしてるとね大きくて暖かな何かに抱かれているような気がして」
靜里は笑いながら再びあふれでようとする涙を拭う。叶はただそれをじっと見ているだけだった。
「でも、どうしてわたしを探していたの?やっぱり生き別れになった兄弟とか?」
彼女の素っ頓狂な発言に、叶は一瞬面食らったような顔をしたが、すぐにもとの冷静な顔付きに戻ってその質問に答えた。
「お前は、俺の先祖の愛した女性の生まれ変わりなんだよ。そして俺は、生まれ変わったお前を愛し、守るのが使命なんだ」
「・・・・・?」
訳が分からずに首を傾げる靜里。
「俺の先祖は、前世のお前をその命を懸けて愛したんだ。そしてその深い愛は、彼の体内に宿り血液の中にまで記憶として鮮明に染み込んでしまった。いや・・正確に言えば、遺伝子にまで記憶が組み込まれてしまったというほうがいいのかもしれない。」
「記憶が。」
叶の話に、さっきまで止まる事なく流れていた自分の涙が、いつの間にか止まっていることを靜里自身まだ気がついてはいなかった。それ程までに、彼の話しに聞き入ってしまっていたのだろう。靜里は口を半開きにしたまま、叶の話を聞き続けいる。


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