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『好き』の言の葉(ことのは)争奪戦!
【同性愛♂ 官能小説】

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『好き』の言の葉(ことのは)争奪戦!-1

1 「要するにだな、男性生殖器も女性生殖器も元を正せば同じ器官だってわけ。それが、母親のお腹の中にいる胎生期に、でっぱるか、退化するかで身体的男女の差が生じるんだ」
 どこから調達してきたのか、医学書らしき分厚い書籍を振りかざして熱弁する真鍋。
 それを、正座して食い入るように見つめる寮生の異様に熱い体温が、狭い6畳間にこもる。
「はぁ〜い、真鍋せんせえ。質問がありまぁ〜す」
「はい、川村くん」
「と言うことは、前立腺が、女性にも存在するということですか?」
 ポンッと膝を叩いた真鍋が、目を一層輝かして叫んだ。
「よくぞ聞いてくれた!前立腺が、男の専売特許と思うなかれ。あるんです!あるんですよ!女性にも前立腺が!」
 真鍋は『嘘だぁ』と訝る同級生に『ノンノンノン』と言いながら立てた人差し指を左右に振るってみせ、その人差し指は、同級生達の視線を誘導しながら宙の一点を指す。
「よぉ〜く考えてごらんなさい。男性の前立腺は何処に存在するか…」
 『う〜ん』と唸った一同が、真鍋の指す宙の一点を見つめる。
 そこには一体何が浮かんでいるのか…
「ほらほら、指を入れて、上のほう…お腹側にあるモノと言えば?」
 『あ〜っ!!』と声を揃えて合唱した一同が、次に叫んだその言葉は、部屋の薄い壁を突き破り、寮中に響き渡った。
「わかった!!『Gスポット』だ!!」

「だぁ〜〜〜〜もぅ、いい加減にしてくれ!!」
 『ピンポ〜ン大正解』と嬉しそうに叫んだ真鍋の台詞を遮るように、我慢の限界に達した俺が、真っ赤になって机から立ち上がり、床に散らばっている同級生に向かって吠えた。
「おまえら!何で人の部屋に来てそんな卑猥な話をするんだよ!自分達の部屋で話せよ。それとも、これは虐めか?新手の嫌がらせか?」
「おまえこそ、いい加減に慣れろよ、朝月(あさつき)」
 俺は、『慣れてたまるかよ…』と呟き、頭を抱えてフラフラとベッドに倒れこむ。
 高校に入学して三年…寮の、この部屋で、夜毎開かれる夜会。
 お題は、決まって『男と女の性について』…。
 自称、講師の真鍋は、最期は決まってこう締めくくる。
「男か女かなんて関係ない。僕達は、男か女かと言う前にただの『人間』なんだ。重要なのは『受ける』か『攻める』か…このふたつが成立した地点で『愛のあるセックス』は成立するんだ。だから朝月。ホラせてくれ」
 『断る。男なんて絶対ゴメンだぜ』と毎度のこと即答する俺に、ケタケタと笑いながら『朝月、食わず嫌いは良くない。男同士もいいもんだぜ』と豪語する真鍋。
 そう、彼は、『ちっちゃくてかわいい人間なら、たいがいオッケー』と言う特異体質の人間だった。
 彼の言葉を借りると『恋愛のプロフェッショナル』…
 普通に言えば、『バイセクシャル』というやつだ。
 恋愛を極めると、そこにたどり着くという、彼の説法は、巧みな話術に乗って、いつしか、好奇心旺盛な少年達を洗脳してゆくのだ…マインドコントロールの威力を痛感する。
 先生にバレないように思いっきり息を吸って止めて…窒息寸前で測って「160cm」…。 
 『これから伸びるんだ』なんて胸張って言える年でもなく、女の子の口から発せられる『朝月君って、ちっちゃくてカワイイよねぇ』…この場合の『カワイイ』は、決して褒め言葉ではないのだ。しかし、そんな言葉の暴力にも、すっかり抵抗する気力を失ってしまったこの頃の俺だったが、三年間続く変態真鍋のアプローチだけには屈するわけにはいかないのだった。
「もう、わかったから出てってくれ。俺は学業に専念したいんだ」
 と言い、シッシッと猫でも追い払うような仕草をして見せる。
 しかし、そんな俺の行為を完全無視の真鍋が『アッそう言えば…』と声をあげた。
「朝月、結婚の話、どうなった?」
「あぁ〜、順調に進んでるよ」
「仕方ないよなぁ〜、デキチャッタんだもんなぁ〜。まぁでも、18歳なら親の承諾さえあれば結婚はできるんだろ?おまえもこれから大変だ」
「別に大変じゃないさ。産むのは俺じゃないし」
 そう言いながら真鍋の方を見た俺は、『うっ…』と息を飲んだ。
 真鍋の後方向かって右側。ヘラヘラと笑う彼とは正反対に、物凄い形相で俺を睨みつけている雅紀(まさき)が視界に飛び込んできたから。
 綺麗な薄茶色の瞳が特徴の、切れ長の目が俺を捕らえて離さない。『な、なんだよ…』負けじと睨みつけるが、俺のすごみなど、仔犬の威嚇…。
 心の底まで見透かされてしまいそうな眼差しに、怖くなってあっさりと視線を逸らしてしまう。
 雅紀とは、気心の知れた仲ではあるが、最近なんとなく距離が出来て、どこかギクシャクしてしまっていた。
 だからって、あんな目で睨まれる筋合いは無い筈だ…そう思いながらも、雅紀の顔を凝視出来ない俺がいた。


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