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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第4話・何処より来たりし黒郵便》-1

今日も一日が終わった。夕焼けは淡く、日ノ土の教室を染め上げる。

「楓、帰る?」

疾風が鞄に教科書を詰めながら、楓に声を掛けた。

「すまぬ、疾風。一緒に帰りたいのは私も同じなのだが…ちょっと、手続きの事で呼ばれておるのでな」

楓が残念そうに疾風に告げた。と同時に、キラ〜ンと光る瞳が一対。

「じ、じゃあ…あ、あた、アタシと一緒に帰ろうぜ!」

千夜子がしどろもどろになりながらも、目を輝かせて…否、ギラつかせて疾風に言った。

「いいですよ」

疾風が答えると、隣りで楓がムッとふくれた。

「疾風!用事はさっさと終わられてくるから!後から必ず追いつくから、絶対にぜぇえええったいに、寄り道とかするでないぞ!分かったな!!」

すごい剣幕で捲し立てる楓。その背後で巨大な仁王像が憤怒の表情をしていた。

「は、はい!」

圧倒的なオーラの前に思わず敬語になる疾風。

「なら、行ってくる!」

楓はそう言って鞄を持って、全力疾走していった。それを呆然と見送る疾風。

「ほら、早く行くぞ♪」

楓の姿が見えなくなると千夜子は疾風の手を取り、嬉しそうにズンズンと歩き出した。

「先輩、歩くの早いですよ!」

疾風が抗議した。だが、千夜子は歩くペースを変えない。

「疾風と二人っきりのチャンス…小鳥遊が来たら台無しだからな…」

千夜子はボソッと呟いた。

「何か言いました?」
「いや、何でもねえよ。それより疾風、コレ食う?」

千夜子はポケットから小さなビニールに包まれたチョコを取り出した。

「ありがとうございます」

疾風は包装を剥した。フワッと甘い香りが疾風の鼻をくすぐる。チョコを摘み、ポイッと口の中へ。

「美味いですね。ビターなのがちょうど良くて」
「だろ?新発売でさ、甘過ぎず、ほろ苦い感じに今ハマってんだ♪」

チョコレートのほろ苦さを語りながらも、千夜子の心では幸せの甘さが溶け出していた。


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