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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第4話・何処より来たりし黒郵便》-6

「功刀殿の所に…行っておったのではなかろうな?」
「いや…仕事に…」
「フッ…そう言って男は仕事…仕事…と、そんな嘘に私が騙されるとでも…」

埒が明かない…

疾風はそう思った。そして嘆息して一言。

「…許婚なら信じて欲しいんだけど」
「うっ…」

許婚という単語に動揺する楓。

「…ず、狡いではないか…こんな時だけ許婚などと…」

ボソボソと口ごもりながら、楓が呟く。

「だが…信じて欲しいのならば態度で示すものだろう…」

そっぽを向きながら楓が疾風に言った。

「例えば?」
「た、例えばだな…その…今週末、二人で出掛けたい…」

楓は強い意思を灯した瞳で疾風を見つめた。

「そんなんでいいの?」
「ああ。だって…お前は…私のことを知りたいと言いながら具体的には何もしないではないから…」

少しずつ楓の頬は赤くなり、瞳は潤んでいく。

「だからな…私と…」

もじもじと手を擦り合わせる楓。決定的な一言がなかなか切り出せない。

「ああもう!楓ねえさんは兄貴とデートしたいって言ってんの」

うじうじする楓と、鈍感な兄に我慢が出来なくなった霞が叫んだ。

「えっ…!?」
「あ、あ、あの…か、霞…その…私は…」
「違うの?」

楓は霞の問いに少し小さくなりながら…

「…違わぬ」

と、消え去りそうな声で返答。そのまま真っ赤なままで俯いた。

「兄貴はどうするの?」
「別にいいけど…」
「ああ…」
「なら、決定。まったく…兄貴も楓ねえさんも…玄関で修羅場ってないでよ…」

霞はそう言って疾風と楓を残して家の奥へ向かった。

「強引だな…」
「…それより疾風…その…週末の事なのだが…」
「いいよ。ちょうど給料も入ったし」
「本当か!?」
「まあ…久しぶりに遊びに行くのも悪くないし」
「そうか♪」

楓は嬉しそうに顔をほころばせた。

何だかよく分からないけど、機嫌が直ったみたいだな…

鈍感な疾風は機嫌の悪かった理由も、楓が喜んでいる理由も分かってはいなかった。
ただ…楓の笑顔は暖かく、疾風も自然と笑っていた。


続く…


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