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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第4話・何処より来たりし黒郵便》-2

《第4話・何処より来たりし黒郵便》

◆◇◆◇◆◇◆◇

日もそろそろ地平線の下へと潜ろうかという時刻。

「じゃあな、疾風!」
「チョコご馳走さまでした。また、明日」
「おう、また持ってきてやるからな♪」

ブンブンと手を振り、何時までも名残惜しそうに千夜子が帰っていく。
やがて千夜子が角を曲がり、その姿が見えなくなると疾風は家の鍵を取り出した。
ガチャリと金属音をたて、家が疾風を出迎える。靴は無く、母も霞もいないようだ。

「楓、遅いな…」

ふと思い出した様に疾風が呟いた。その頃、楓はというと…

◆◇◆◇◆◇◆◇

『小鳥遊さん、俺と付き合って下さい』
「断る」

名も知らぬ男子を一刀両断で切り捨て、野郎共の屍山血河を築きながら、家路を急いでいた。

『ち、ちょっと…』
「ええい、うっとうしい!」

手続きの問題を解決した楓だったのだが、近くに疾風がいないのを幸いと思った野郎共が、楓を狙って動いていた。その為、楓の帰宅は段々と遅れていくことに…

「ああもう…こんなことをしている間にも、疾風が…」

千夜子とイチャつく疾風を想像し、気が気ではなかった。

『すいません、小鳥遊さん!今いいですか?』
「今度は何だ!?」

急いで帰りたい。

そう思っていても、呼び掛ければ律義に足を止めてしまう楓であった。

◆◇◆◇◆◇◆◇

…とまあ、楓はこんなことになっているが、もちろん疾風は知る余地も無いので、呑気に欠伸をしつつ居間に向かっていた。
居間への扉を開けた。ふと、疾風の視界に一つの封筒が現れた。
形自体は普通。だが、それは影を思わせる漆黒の封筒。居間という日常の中でそれだけが異様に目立ち、まるで異界への招待状の様だった。

「…来たか」

疾風は少々、厳しい面持ちで封筒を手に取った。住所などはもちろんのこと、切手すら無い。

「前々から思ってたけど…コレ、どうやって配達してんだろ?」

異様、異質、それらで構成されている黒き郵便。

「コレ読むと寿命が縮まるなんてこと…無いよな…」

ふと、霊界からくる新聞を思い出した。それを郵便に置き換えてみる。

窓ガラスを突き破って配達される郵便…

洒落になんねぇ…

あまりにも、有り得そうな想像に思わず身震い。

「まあ…冗談はさておき…今日の依頼は…っと」

黒い封筒の糊付けを丁寧に剥していく。内面も黒一色、それどころか入っていた便箋さえも黒一色だった。

「ええっと…何々…依頼内容、通り魔調査…」

送り主は問題処理屋を統括する機関。依頼は一度全てこの機関に送られ、そこから各処理屋に送られる。

「最近は物騒だからな」

黒一色の便箋に書かれた白い字を目で追う。


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