おほしさま-5--1
act 5 《沙織》
左手首から、鮮血が滲み出る。
俺はただ、それを呆然と見つめていた。
これで、沙織の元へ行けるのか。
よかった。いや、安心した。と言うべきか。
ぼんやり考えている間にも意識が薄らいでいく。ゆっくりと瞼を閉じると、沙織が、うっすらと見えた気がした。
自然と顔が笑い、そこで俺の意識が途絶えた。
〜〜〜
気が付けば、まっ暗な世界。
ここはどこだ?…そうか、俺は死んだのか。だが、見渡すかぎり、真っ暗で沙織は見つからない。
−どうしたら沙織に会える?
不安になる。
途方に暮れていると、指に嵌めた星の指輪が光った気がした。
今まで一面の暗闇だった空間に、次々と光が現れる。それは流星の滝のような、自分が銀河にいるような感覚だった。
「なんだ…?」
突然の出来事に心臓が早く鼓動を打つ。
暗闇じゃなくなった分、視界は広がったが、沙織は見当たらない。
とりあえず歩くことにした。
死んだ後は幽霊になってそのまま浮いたりさ迷ったりするかと思っていた。
今頃、俺の死体は誰かに発見されただろうか?
ごめん。お父さん、母さん、百合乃、詩織さん。
俺は、死んだ。
〜〜〜
もう、何時間歩いただろうか。
疲れはしないのだが、精神的にまいる。
案外、死後の世界も楽じゃないのか…。
ふと、前方を見ると一つの人影を見つけた。
−沙織か?いや、違かったら…
喜びと不安が全身を駆け巡る。
「沙織ッ…?」
「宏…輔…?」
よかった!!沙織だ!!
自然に涙が出てくる。
「沙織!!よかっ…」
パシィン…
よかった、と言い終わる前に、思いっきり平手打ちを食らう。
右頬がひりひりと痛む。