消えなかった思い-1
俺達はメールで付き合ってメールで別れた
わずか1ヶ月の間
でも忘れることなんてなかった
この日が来るまで
俺の名前は攸(ゆう)。今大学2年生。高2までは毎日のようにサッカーに明け暮れ、高3から勉強はじめて、まあそこそこの大学に入った。1年もたつともう大学にもすっかり慣れたもので、友達もそれなりに作り、暇な時間はバイト。そんな普通すぎる生活を送っていた。
2年っていう時期は一番遊び時だ。男も女もサークルだとか合コンだとかで相手見つけて付き合ってるやつが多い。でも俺は別にこれといった相手がいるわけじゃなかった。でも自分だけ相手がいないのも微妙だし、
『なんとなく誰でもイイから付き合うか。』
そんなノリでとりあえず同じバイト先の後輩、佳菜と付き合い始めた。
まぁ付き合いはじめたのは軽いノリ。たまたまそうゆうムードになったから。お互い相手いないし。最初はそんな感じだった。
付き合って3ヶ月くらいのある日、いつも通り公園でのデート中、佳菜がいきなり深刻な感じで尋ねてきた。
『攸、他に好きな子いるの?』
『ん?なんで?いるわけないじゃん』
『正直に言って!!』
…マジでいない。俺なんで疑われてるんだ?
『いや、誓って佳菜意外にはいないから。なんでだか教えろよ』
少しキレ気味に返す俺。
『…ただなんとなく。ごめんなさい。』
『や、別にわかってくれればいいけど。』
そう言って抱きしめたら佳菜はいつもの笑顔に戻った。こうやって優しくしてあげれば、佳菜の気嫌はよくなる。俺はそこらへんのことは、よく心得ていた。
後で思えば、その時は自分で"いない"って思いこんでただけだったんだけど。
その日以来、佳菜がその話に触れることはなく、順調に付き合い、気付けばもうすぐ1年になろうとしていた。その頃になると、最初とは比べられないくらい、俺は佳菜を好きになっていた。
今日は付き合ってはじめての佳菜の誕生日。俺は初めて佳菜をウチに呼んで二人で一日中過ごした。外は雨だし、すっかり日も暮れてしまい、俺は佳菜を駅まで送っていくことにした。いつもだったら地元では彼女とは歩かないことにしてた。知り合いに会いたくないから。でも、この日は佳菜の特別の日だったから。
二人で一本の傘を指して歩く。俺達は濡れないように密着して歩いた。手をしっかりと握りしめて。その時だった…
カツ、カツ、カツ
目の前から聞こえてくるブーツの音。女の子がこっちに歩いてくる。スラッと高い身長に細い足、整った顔、パッチリとした目。俺は一目でそいつが誰だかわかった。向こうも俺に気付いたらしい。俺は佳菜と繋いでいた手を反射的に離した。