HIDE AND SEEK-1
「ねぇ、知ってる?秋名神社のかくれんぼの噂」
あたしたちが何人かで集まって弁当を食べている時だった。
誰かがそんな話を切り出したのは。
「秋名神社のかくれんぼの噂?」
「どんな噂なの?」
「うん、なんでも秋名神社でかくれんぼをして最後まで鬼に見つからなかったら願い事が叶うんだって」
「何それ?」
「そんな事あるわけないじゃん」
噂話を提供した子も含めてみんな笑っていた。
ただ一人あたしだけを除いて。
「ねぇ、今日の放課後にそれやってみない?」
気が付いたらあたしはそう言っていた。
そして放課後あたしたちは秋名神社の境内に集まっている。
あたしの他にいるのは5人。
一緒に弁当を食べていた女の子のうちの2人とあたしたちの話を近くで聞いていて、この噂に興味を持った男子3人。
つまりあたしを入れて女子3人、男子3人の計6人である。
「じゃあジャンケンで鬼を決めて早速始めるか」
男子の一人がそう言った時、あたしの頭の中にある疑問が浮かんできた。
「鬼の願い事ってどうしたら叶うの?」
あたしは隣にいた噂話の提供者である女の子に尋ねる。
「えっと…確か他の人を全員見つければいいんだよ」
「えっ、それだけ?」
「うん、たぶん…」
「じゃあ鬼が一番楽なんじゃねー?」
あたしとその子が話してるところに男子が口を挟む。
「そう…かも…」
「ま、とりあえず鬼を決めようぜ」
ジャンケンの結果、あたしは見事に負け、鬼となった。
あたしは仕方なく目を閉じて、数を数える。
「1、2、3、……………、97、98、99、100!もういいか〜い?」
「もういいよ〜」と言う声が方々から境内に響き、霧散する。
あとに残されるのは神社特有の荘厳なる静謐だけ。
目を開けて辺りを見回しても当然見える範囲に人は誰もいない。
あたかもこの荒涼とした場所にあたし一人だけが取り残されたかのよう…
「よし、探しますか」
あたしはこの境内のどこかに隠れているはずの友人たちを探し始める。
全員を見つけて願い事を叶えようという淡い野望を胸に秘めて。