刃に心《第3話・転校生はちやほやされるもの》-4
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学校に着き、楓は校長に挨拶。疾風の父、才蔵のコネ及びその他諸々により、たった一日で転校が決定。
で、疾風はと言うと…
「………」
「…吐いて…楽になっちまえよ」
取り調べ中だった。疾風の正面では彼方が椅子に斜めに腰掛け、煙草を吹かす真似。
「ネタは上がってんだ。誰なんだ?…朝、一緒登校していたあの可愛い娘は?ぁあ?」
「………」
黙秘権を行使する疾風。
「ほら…お母さんも泣いてるぜ…」
「疾風、貴方…何て事を…」
母親役の間宮ユウがハンカチで目許を押さえながら台詞棒読みで登場。
「私は…私は…貴方をそんないやらしい子に育てた覚えはありません」
「俺も貴方に育てられた覚えはありません」
思わず反論。
「反抗期、反抗期だわ」
「お母さん…気長にいきましょう…いつか、きっといつか、息子さんも分かってくれる日が来てくれるはずです」
「ああ…刑事さん…」
手と手を取り合う刑事(彼方)と母親(ユウ)。
安いドラマが順調に進行中。
「そんなに知りたかった、本人に直接聞いてくれ」
いい加減面倒臭くなった疾風が言った。
「でも、このクラスに転入するとは限んないけど」
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「小鳥遊楓と申します。どうぞよろしくお願い致します」
はしゃぐ彼方、そして彼女のいない野郎共。机に突っ伏す疾風。それを苦笑しながら見守る武慶と希早紀。苦々しげな千夜子。教室内の表情は千差万別であった。
で、転校生がやって来たということは…
「ドッキドキ♪楓ちゃんを質問責めにしてしまお〜う♪」
セオリー通りの質問会。筆箱をマイクに見立てた彼方が叫んだ。
「ゲストは、小鳥遊楓ちゃん♪そして、裏切り者の忍足疾風!!司会進行はわたくし、上から読んでもタナカカナタ、下から読んでもタナカカナタ。タナカカナタ、田中彼方がお送りしま〜す♪」
そして、壇上では疾風と楓が椅子に座らされていた。
「ではさっそくいきましょう!楓ちゃんのお住まいは?」
「疾風の家に下宿している」
真面目な性格の為、質問にきちんと答える楓。即答した楓に疾風はじと目で対応。
そして周りは大歓声…
『ざけんなぁ!』とか、『死を!裏切り者には死の制裁を!』とかの大歓声…
「では、次!疾風との関係は?」
「親戚みたいなもん」
今度は疾風が先制。
「実際のところは?」
「えっ…あ、ああ。あながち間違いではない」
だって、将来は親戚どころか……フフッ♪
と内心ほくそ笑む楓だった。