瞬きも忘れて-1
無意識のフィルターを通して行われる事。
たくさんあるんだね。
気付いているはずなのに、僕はわからなかった。
それは
呼吸。
瞬き。
そして……
君とのこともそうかな。
当たり前にいてくれた君。
どれほどの時間を一緒にいたんだろう。
最初は胸高なった。
激しく、優しく。
優しく抱きしめられる度々。
震えていたのはこの魂だろう。
震える僕に君は優しく微笑んでくれていた。
それは幼い頃に母に抱かれる感覚。
消えてなくなりそうな
ちっぽけな自分の存在を
実感できる感覚なんだ。
いつかは消えてなくなるから。
全てが真っ白になってしまうから。
僕が僕だという証明。
それは君が与えてくれる。
君に必要とされるから強くなれた。
そして…
そんな君も
大切な君も
旅立ってしまう。
夕方の駅で僕は君を見送った。
届けたい言葉はいっぱいあったんだけど、胸に詰まりすぎてうまく出てこないよ。
それは
「愛してる」だったり
「行かないで」なんだろうなぁ。
涙は見せたくない。
それが君を哀しませるからじゃない。
幼い僕のつよがり。
でも
我慢できず
一筋のそれが流れ落ちた。
僕は下を向いて目を合わせられなかった。