瞬きも忘れて-2
ようやく出てきた言葉は
「ちゃんと飯食えよ。」
それが言いたかったんじゃないのに。
もっと大切なことが沢山たくさん伝えたかった。
「忘れないで」
胸がキリキリと悲鳴をあげる。
「戻ってこいよ」
淡い期待を自分で打ち消した。
ホームは静まり返る。
まるで全てを受け入れるように。
僕は涙を拭い、
君を見つめた。
瞬きもしないで。
忘れない。
瞬きを忘れるくらい君を。
ドアが閉まる。
「元気でね」
君の最期の言葉。
アナウンスが流れた。
そして
走りだした。
君を乗せたそれは。
僕も走った。
走って走って……
届くわけないのに。
息を切らしながら手を振った。
君は小さくなっていく。
見えなくなっていく。
駅の階段を降りながら僕はまぶたを擦った。
気まぐれに吹きつける北風が
心地よかった。
そして時は流れる。
瞬きのように。