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『特別な日』
【ホラー その他小説】

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『特別な日』-2

「あんた、警察か!オレを捕まえに来たのか!もう無理だぜ。たった今時効が成立したんだ!オレは15年逃げ延びたんだ!」
 
 そうこの男は15年前、罪もない女性を殺していたのだ。 
 「××××さん、あんたは確かに逃げ延びた。ただ、罪に本来、時効なんてないのさ。あの娘を殺した罪は未来永劫消えることはない。私もこの時を待っていたんだ」
 
 男は壁を背に、ズルズルと崩れ落ちていく。
 
「あんた、何者だ!」
 
 私は座ったまま、気づかれぬようにゆっくりと、相手の心に食指を伸ばし始めた。  
「あんたに殺された娘に頼まれたのさ。このまま時効を迎えるようだったら、かたきを討ってほしいとね」
 
 バーテンは少し前に、私の《力》で死なない程度に失神させておいた。カウンターから厨房につづくドアの隙間からは倒れているコックの靴がのぞいている。
 
「あんたが不安から開放され、喜びの絶頂にいるその時を狙って殺す。それがあの娘の望みなのさ」
 
 わたしの精神はギリギリに張った弓のように次の瞬間を待ち構えている。
 
「だから、今日、12月31日はあんたにとっても、私にとっても特別な日なんだよ」
 
 男がこらえ切れず、壊れたスピーカーのような叫び声をあげた、その瞬間……。
 
 
 私は精神を解き放ち、獲物を襲う肉食獣のように、震える男の心に飛び掛かった……。
 
 
 
         End


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