交錯する想い-2
普通の女の子なら彼のような美青年なら迷わず恋に落ちるようだとは思うけど、残念ながらあたしは違う。もう普通じゃないのかな?
『ほら、言ったそばからまたぼけっとしている』
あたしはまた美央から指摘を受ける。額を人差し指でこづかれる。
恥ずかしい想いと同時に自分の秘めたる想いの大きさに気付く。
『そう言えばさ。涼子ちゃんって誰か好きな人っているの?』
唐突に、しかもそれはあたしの心を覗いていたかのようなタイミングで尋ねられた。
『あたしずっと気にしていたんだよね。だって、涼子ちゃんってこんなに美人なのに全然そう言う雰囲気無いじゃない。ああ、あたしのことはいいから。自他ともに十分わかっている点だしね。それよりも涼子ちゃんはいるの?いないの?もう長い付き合いの彼でもいたりして』
やたら、暴走気味の美央の声と、あたしのから笑いが部室に響く。彩夏のことが気になっているなんて話せるわけないよね。
すると、さっきまであたしの髪を触っていた美央があたしの首筋を舐めるように耳元に近付く。
『でもね、涼子ちゃんは自分一人で考え込んじゃってつらい思いしているんでしょう?あたしに話してなんてずうずうしいことは言わないよ。もし、あたしに話せる時がきたらあたしに教えて。あなたに悩み事なんて似合わないわ。』
見ると美央はいつも通りの可愛らしい顔をしていた。
いつもと同じように部活にいって。いつもと同じように美央にからかわれて。あたしはいつもと同じように作業して。いつもと同じように一年生が入れてくれる紅茶をもらう。あたしは紅茶にミルクも砂糖も多めに入れる。だってあたし、甘いの好きだから。
でも、今日もいつもと同じようにしたはずなのに紅茶の味は分からずに飲んでいた。考えても無駄なことだと分かっていながらあたしはひとついつもと違う言を考えていた。分かるんだね友達って。あたしはありがとうって言いながら彼女を軽く抱き締めた。
『それじゃあ、お先に。』 そう言って、美央と他の部員が次々に帰宅する。後にはあたしと真人くんが残った。部屋は嵐が去ったように静かだった。
『真人くんはまだ帰らないの?』
彼もまた、展示作品となっているものを仕上げていただろう。男の子なのに細かい仕事をするわね。
あたしはそう感心しながら彼に尋ねた。
『実はこれはついでなんですよ。須藤センパイ。センパイと話がしたくて』
あたしは部室の片隅で片付けながら聞き返す。あたしと彼しかいないのだから仕方ないけれど、まるで世界が死んでしまったかのよう。だから余計に彼の足音、あたしの吐息。それらすべてが余計に目立つ。
『あたしと?』
彼はあたしに近づいてくる。近づいて近づいて、彼はあたしの目の前にいた。逃げられないな。あたしはそう思った。
『須藤センパイ、俺はセンパイの事が好きなんです。男子が俺しかいない部活にいるのはセンパイがいたからなんですよ。』
あたしは彼の突然の告白に口籠もってしまう。だってあたしは他に好きな人がいるから。