心理学的『性的興奮』のススメ♪-1
「和哉、俺にもチョウダイ♪」
俺は、ポテトを口に咥えたまま呼ばれた方へと、顔を上げる。すると途端に、俺が咥えているポテトの反対の先をパクリと咥えられてしまう。
恐る恐る視線を上げると、そこには、嬉しそうに微笑んでいる浩志のアップがあった。
「うわっ!」
青くなって、慌ててポテトかから口を離すと、俺の向かいの椅子に腰掛けている浩志は、口先に残ったポテトを口の中に吸い込んで、肘をついてニヤけていた。
「なぁ、なぁ、和哉。もっとチョウダイ♪」
「あのなぁ〜やるから、普通に食えよ、普通に!」
怒鳴りながら、手に持っているポテトをぶっきらぼうに差し出す。
すると、その腕は、いきなりものすごい力で引っ張られ椅子から剥ぎ取られた俺の体は、机を挟んで向こう側の浩志の胸の中に吸い込まれる。そして、
「俺が欲しいのは…ポテトじゃなくておまえだよ」
甘く耳元で囁く浩志。
教室が一瞬静まり返り、教室中の視線が俺たちに集まっているのを背中で感じて…その後は。
そう…。いつものように、俺の悲鳴が学校中に響き渡るのだった。
「和哉、今日もいい感じの叫び声だったな」
浩志がケタケタケタと笑いながら教室を飛び出した後、ドンヨリと机に突っ伏していると、隣の席の笠間が、俺の頭をヨシヨシと擦りながら話し掛けてきた。
「アイツ、2年だよな。ここんとこ、毎日来てねぇ?」
「あぁ、弟と同じクラスの子なんだよ。ほんと、マジで鬱陶しいよ。しかし、俺をカラかって、そんなに楽しいかぁ?」
「そりゃ楽しいでしょ、俺でも楽しいもん」
ムッとして見上げる。「わりぃ、わりぃ」と、手をヒラヒラ振って笑っている笠間。
「おまえが、かわいいリアクションするから、ついつい、いじめたくなるんだよ。本当に嫌なら、相手にしなきゃいいだろ?『もう、俺の周りをうろつくな!』って言ってやれよ。今の様子じゃ、おまえだってまんざら嫌でもないって風に、俺には見えるけど?」
「ばか!弟の友達だから、あまり冷たくも出来ないだろ!それだけだよ」
と言い、わざとらしいほど慌ただしく、次の授業の、古文の本を机の上に並べる俺を『本当にそれだけか?』なんて言いながら覗き込む笠間。
俺はジロッと睨んで、目の前にある笠間の額を、流行の罰ゲームの如く、思いっきり鉛筆で弾いてやった。そして、引っ張り、引き寄せた耳に向かって『それだけだ!』と大声で叫んだのだった。
だけど、そんな俺の心の奥は、何故か『本当にそれだけだよな?』と疑問符をつけて俺に問い掛けてくるのだった。