心理学的『性的興奮』のススメ♪-5
「浩志、わかるから。浩志の気持ち。だから、もう…そんな顔すんな。俺の心臓がもたないよ」
「和哉…あんた、どこまでお人よしなんだろうな…」
「あぁ〜そうだよ。でなきゃ、おまえなんか好きになったりしないさ、浩志」
浩志は俺の耳元で嬉しそうにクスッと笑って、俺の首筋にキスをする。
そして、再び重なる唇。舌を巧に弄ばれながら、肌を伝ってサラリとシャツが滑り落ちると、露になった肩と背中に、冷たい夜風が吹きぬける。
浩志の軟らかい唇で鎖骨や肩を啄ばまれると、尾てい骨の辺りから、ゾクッとするような痺れが沸々と止め処なく湧いてきて、『ん…』と甘い吐息を吐いてしまい、思わず唇を噛んだ。
そんな俺の反応を嬉しそうに見ていた浩志が、いきなり俺の手首をを掴んで、手繰り寄せる。
浩志は、その冷えきった手の甲に『チュッ』と音を立ててキスをする。そして、固まってしまっている俺を、じっと見据えたまま、ゆっくりと、指を付け根から指先に向かって舐め上げる。
一本一本丁寧に、『ピチャピチャ』と、子猫がミルクを舐める時の様な音を立てて舐めたり、爪の先を優しく吸う感触と、その艶かしい姿、それと、片時も離れない熱い眼差し…。
俺は、どうすることもできない感情の昂ぶりに、翻弄されて、思わず浩志の顔をすくい上げ、その濡れた唇に吸い付いた。
後は、もう、お互い夢中で舌を絡め合うだけ…。
眼の前の激しいキスに溶けてしまいそうになっていた、その時、周りの空気がザワッと動いた。
「お〜い、和哉。あれ?いないのかぁ?」
か、笠間!!
現実に引き戻された俺は、ハッと振り返る。ドアが開く寸前に、咄嗟に浩志が引いたカーテンの向こうで、笠間と弟の声がする。
「笠間さん、浩志もいない?」
「あぁ、いない…二人とも」
俺は、眼の前の、人生最大のピンチに体を強張らせた。
こんな格好。死んでも見られたくない。
しかし、そんな俺の気持ちを、あざ笑う奴がいた。
身を潜める俺を、浩志は押し倒し、キスの雨を降らせる。やめろと首を左右に振ってもがく俺を尻目に、浩志はいきなり俺の下肢の間に手を伸ばす。
「!!」
ズボンの中に入ってきた手のひらに包まれて、軽く握られると、体がピクッ跳ねる。上下に擦られると、『クチュ、クチュッ』と濡れた音が聞こえてくる。浩志の手のひらがスルリと下のほうへ落ちて、指が埋め込まれる感触。思わず『くっっ!』と声が漏れる。
「コレ、ね。わかる?前立腺…」
耳元で囁かれ、恥ずかしいのと、その一点を攻撃されると溶けてしまいそうにな快感で、俺は、我を忘れて浩志にしがみついた。
「あっ…うんっ…やっ…」
我慢できずに小さく叫んでしまった俺は、ハッと口を押さえ、カーテンの向こうに目をやる。
風でカーテンが揺れると、床との隙間から、向こうのふたりの足が見えた。
一瞬止まり、『何か聞こえなかったか?』と振り返った二組の足。
心臓がバクバク。
笠間が、こちらを振り返ったまま呟く。
「アイツ…喰われちまったかな…」
「……笠間さん…」
―パタン…―
扉が閉まって、再び静寂が戻った。