おほしさま-4--1
act 4 《叶》
沙織が目を覚まさない。
いくら揺さぶっても、
いくら声をかけても、
いくら願っても。
沙織が目を覚まさない。
「まだ沙織さんは死んでません。意識が無いだけです。…まだ、諦めないで下さい」
「俺が外出させたから……、俺が…沙織…を…」
罪の意識が込み上げる。沙織を連れ出したのは俺だ…。もし、これが原因だったら…沙織を殺したのは…俺だ。
「…あなたは、沙織さんの願いを叶えてあげたんでしょう?私には分かりませんが、沙織さんは幸せだったと思います。…最期に大好きな彼氏と願いを叶えた…幸せでしょう」
「優しい言葉なんてかけるな…。」
沙織の余命は今日を入れて二日…。
なのに今日倒れてしまった…沙織は、一週間も持たなかったのか…。
嫌な思いが全身を駆け巡る。
「宏ちゃん!!沙織は…?」
病室のドアを勢いよく開き、息を切らした百合乃が入ってくる。
目には涙を浮かべ、今にも泣きだしそうな顔だ。
「意識不明…まだ覚めない」
「そんなッ…沙織…!!」
顔を手で覆い、泣き崩れる百合乃。
…親友が泣いてんのに、当の俺は涙すら出ないや…。まだ信じられていない。沙織が倒れたことが。
「なんで…後二日でしょう?なんで今日なのよ!!」
泣きっ面の百合乃が俺にしがみつく。
「俺…が、外に連れ出したから…」
「……え?」
「真夜中に…連れ出したから…」
「…宏ちゃんのバカ!!なんでこんな時に連れ出すの!?これで死んじゃったらどうすんのよぉ!!!ふざけないでよ!!……バカ…ばかぁ…」
−言い返すことが、出来なかった。
百合乃は泣きながら俺の胸をどんどんと叩いている。
たとえ、沙織の願いを叶えてあげたかったから。と言っても許してはくれないだろう。百合乃はそんな性格だ。
ベッドの上には沙織が横たえている。
白い滑らかな肌、長い漆黒の髪、細い華奢な腕を持つ沙織が、静かに目を閉じている。
指に嵌めた星の指輪だけが、キラキラと光っていた。
「こ…すけは…悪くな…いから…」
「沙織…!?」
沙織が目を覚ました。
けだるそうに目をぱちぱちさせ、少し、いや、すごく元気が無い。