おほしさま-4--2
「沙織…よかったっ…目を覚ました…っ…」
あれ…?なんで泣いてんだ…。沙織が倒れたときは泣けなかったのに…。涙が止まらねぇ…。
「ダメだよ……男が…泣いちゃ…」
「るっせぇ…っ…男だって…泣く…」
気付けば沙織も涙を流していた。
沙織の傍では百合乃が大泣きしながらしがみついている。
「…宏輔…ッ」
「ん…?」
「ぎゅうって…ね…」
「わかった…ッ」
いつものように沙織を抱きしめる…はずだった。
沙織の腕が、自分の身体にまわらない。
「あ…れ?…腕も動かないや…おかしいな…ッ…腕…ぐすっ…動かッ…ひっ…ない…」
「沙織…、大丈夫だから!!動くよ…きっと…」
沙織を強く、強く抱きしめる。もう二度と手放すものか。
俺が腕となり、足となり、死ぬまで沙織と一緒に居てやる。
「やっ…だ…動かないよぉ…!!足も腕も…やだ…やだ!!」
「沙織!!落ち着け!!…落ち着け…」
沙織を落ち着かせなければいけない。
今の沙織は多少パニックになっている。
「死にたくない…よぉ!!まだ…何回もぎゅうってしてもらいたい!!手繋いで歩きたい!!……いや…いやぁ!!」
「沙織…おちつ…」
「なんで私なの!?…死んだらなんもッ…んむ…」
泣きじゃくる沙織をなだめるため、唇を重ねた。隣に百合乃がいるが関係ない。落ち着かせなければ…。
「ん…ッ…むぅ…」
長い、長いキスだった。
「落ち着け。な?」
「ごめん…」
実際…俺だって狂いそうだ。今こうやって理性を保ってんのが不思議なくらいだ。
だけど今は、俺より沙織だ。
「…宏輔?」
「…?」
「私が死んでも…、宏輔は生きてなきゃダメだよ?」
「何言ってんだよ…」
「よかったぁ…」
実際、自信は無い。
沙織はいつも俺の横にいた。いや、いるはずの存在。もしそれが無くなれば、俺は何をしでかすか…わからない。
「そ…れでね…、私が指輪に願ったことはね…
……す…が、……ひ……け…ように…」
「…沙織?」
「………ばいばい…」
…ふっと目を閉じた沙織。
「おい沙織!!起きろ!!まだ、まだ死ぬな…早いよ…起きろよぉぉぉ!!!」
「一日早い…ですが…、心臓停止しました…」
「なッ…!?そんな…」
沙織は、幸せそうな顔をしていた。
ただ俺は、沙織を抱きしめ泣き叫ぶことしか出来なかった。
…一週間も、持たなかった。
その現実を受け止めるのが辛い。