車輪の唄2-1
駅に着くと自転車を降りた。
まだ朝早いせいもあり駅は無人で沈黙を守っている。
彼女もうつ向き僕の後に付いてくる。
僕は券売機に目をやった。
一番端の一番高い切符指す場所は僕にはよくわらからない土地…。
一番安い入場券を手早く購入し彼女を見つめる。
彼女も僕の視線に気づき顔を僕に向けてくる。
愛しい……ハナレタクナイ。
「じゃあ入ろうか。」気持ちとは裏腹な言葉が出てくる。
「うん…。」
彼女が先に改札を通り抜けようとしたが肩に掛けていた大きな鞄が改札にひっかかり(この鞄はおととい彼女に買わされたものだか)彼女は僕に目を移した。
何も言えず、顔も見れず、僕は黙って頷き鞄の紐を外した。
「しっかりするのよ。」「…わかってる」「…ちゃんと勉強もしてね。」「……大丈夫。」
発車と終わりを知らせるベルがなる。
彼女は特別な一歩を踏み出し、そして振り返らずに
「ありがとう…約束して。必ずいつかまた会おうね。」
小さく震える声で呟いた彼女に答えることができずに、扉は音をたてて閉じた。
視界がボヤけて前が見えない。
手をふることしかできなかった………。