たまんねぇんだよ!-4
「怖くないって言ってんだろ!」
毒づく浩介の唇に軽くキスをして、俺は、自分と浩介の一触即発の欲望の塊りを束ね握った。
生まれて初めて感じる感触に、二人は同時に『うんッ』と小さく叫んで、歯を食いしばってたから、思わず目を合わせ苦笑い。
「もし、おまえが酔いから醒めて、それでも俺を必要としてくれていたら、その時は絶対待ってやらないから、覚悟しとけ」
「死んでも忘れてやるもんか!」
約束だな…呟き、ゆっくり手を動かし始める。
「あぁ…っ太一、太一…太一…!」
『はぁ、はぁ…』と切なく息をはきながら、ひたすら頂上目指し駆け上がる浩介が、うわ言のように俺の名前呼ぶ。
「なんだよ、俺はここにいる。ずっと、おまえの傍にいるんだから」
俺の首に巻きついた腕に力が入って、抱き締めた太一の背中にしがみ付いて…。
深い深い海の底に吸い込まれていくように、果てていくふたり…。
始まりの朝に目を細める。
軟らかい日の光を背中に浴びて寝息をたてる浩介を眺めながら、その羽毛のような髪の毛を、指ですくい取る。
そうだなぁ、浩介。おまえが目覚めた時、さっきの事をすべて覚えていて、それでも現実から逃げ出さない勇気があったなら…ご褒美に。婚姻届でも取りにいくか?
「いい考えだろう?なぁ、浩介」
子供のような寝顔にくちづけながら、優しい気持ちで穏やかな時間にどっぷり浸かる。
これから、今日提出の白紙のレポートに気付き、慌てる俺と、一限目の講義が、命を賭けても落せない浩介が、跳ね起きて頭を抱えてる。そんな昨日と何一つ変わらない一日が始まるとは、気付かずに…。
慌てて玄関から飛び出すふたり。始まりの太陽に向かって走りだす。
―寂しいなんて言ってられない、ドタバタ愛を君に―