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刃に心
【コメディ 恋愛小説】

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刃に心《第0話・ぷろろーぐの影》-1

日本のある街。この街の夜に踊る姿無き者…

夜の世界を渡る影…
人知れず悪を討つ影…

これは、そんな影の物語…

《第0話・ぷろろーぐの影》

◆◇◆◇◆◇◆◇

春の宵。暁を覚えるまでには後少しかかりそうである。その為、寝静まったある商店街…

『おい、この辺にしようぜ!』
『そうだな!』

手にスプレー缶を持った若い男が二人。だらしなく緩んだ服とジャラジャラと音をたてる多くのアクセサリー。

二人は自称『芸術家』。
彼らの『アート』とは落書き。落書きが犯罪であることを彼らは知っている。だが、若さ故の衝動というべきか、大人や社会に対する反発というべきか…これまで捕まったこともないのも手伝って彼らは『アート』をやめようと思ったことは無かった。
今宵も彼らは商店街のシャッターに向かい、スプレーを吹き付ける…

◆◇◆◇◆◇◆◇

彼らの後方、ある店の屋根の上…

「目標補足っと…」
「あ〜あ、始まってたか…また、帰るの遅くなる…」
「仕方ないじゃない。手筈は確認した通りね」

此所にも二人の人影。しかし、現代にはミスマッチ過ぎる、異様な風貌…
黒一色と藍一色の闇と同化する様な服。口許を隠す覆面。
その形を一言で言えば『忍者』!もうそれ以外の喩えは見つからない…
流石にコスプレ大国日本の秋葉原でもお目にかかる機会は少ないだろう…

「とにかく作戦開始」

二人の姿がフッとかき消えた。月光に揺れる影の如く…

◆◇◆◇◆◇◆◇

『ヨシ!完成!』
『おっ!カッコいいじゃん!』
『だろ?俺、やっぱ才能に溢れてんじゃね♪』

男達は完成した絵を見て満悦の表情だった。完璧なる自画自賛、完全なる迷惑行為。だが、彼らにしてみれば立派な『アート』。

「落書きは犯罪ですよ」

不意にかかった声。若いがこれといった特徴の無い声だった。

『あぁ?何だ、お前』
『テメェに関係ねぇだろう』

彼らは振り返った。だが、その声の主を確認する前に彼らの世界は暗転していった…

◆◇◆◇◆◇◆◇

「終わり…だな」

瞬時に二人に当て身を食らわせ、気絶させた黒服忍者が呟いた。

「カスミ」

男二人を壁に立て掛けると、もう一人の藍服忍者を呼んだ。

「あいよ、適当に暗示をかけときゃいいんでしょ?」
「……やりすぎるなよ」

黒服忍者は男達をもう一人に任せ、自分は白いペンキ缶を持って、すばやくシャッターに刷毛を滑らせいく。

「何で…夜中にこんなことまで…労働組合に言ってやろうかな…残業手当もつかないし…」

ぶつぶつ文句を言いながらも、数分で男達のアートを白く塗り潰した。


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