おほしさま-2--1
act 2 《心》
信じられなかった。
あの、元気とは言えないがそれなりに良好な状態の沙織が…、あと一週間?7日?
時間であらわすと168時間。
−いくらあがいても変えられない、一週間。
「なんでうちの沙織が…こんな目に…」
隣で泣き伏せる詩織さん。
なんで一週間?
なんで沙織が?
嘘だろ。これは嘘だ。
沙織があと一週間で死ぬわけが無い。
気がつくと俺は、医務室へと走っていた。
走れ。早く。
これが嘘だということを証明してやる。
…もし、もし本当だとしても!!
助かる方法があるはずだ。
「先生!!沙織のことは嘘だろ!?」
思いっ切りドアを開ける。
沙織の担当医は、驚くわけでもなく目を伏せめがちで答えた。
「…嘘じゃありません。本当です。今日を入れて約一週間後に、心臓の鼓動が停止します。」
「じゃあ病名は!!?病名を教えろ!!」
医者は頼りにならない。
こうなったら、俺が一週間で沙織を治してやる。また、一緒にいられるようにしてやる。
「…病名は、ありません」
医者から告げられた言葉は、予想外過ぎた。
「…何言ってる…!?」
「まだ、研究途中です。延命措置でもできれば良いですが、そんな大発明、奇跡が起きても無理ですし」
声が震える。
病名も無く、治すことも出来ない。
それが、沙織に襲い掛かっている。
「現段階でわかったことは、ハイペースで身体の機能が弱まり、後に死に至る。…止められません。」
そんな簡単に…沙織が…。
「後一週間、沙織さんに思い出を、いや、想い出をたくさん作ってあげて下さい。貴方は彼氏でしょう?彼女の願いを出来るだけ叶えて下さい。ただ、外出は禁止。」
なんでそんな簡単に…人の死を言えるんだよ…。
「ふざけんなッ!!!!お前医者だろ!!助けろよ!!沙織を…沙織を…」
「助けられない患者を助けることが出来ると思うか!?現実を受け止めなさい!!やれることはやった!!最新の薬も全部試した!!……助けることが出来ないのならば、せめて最高の幸せをプレゼントしてやってください…」
医者の目にも、うっすら涙が浮かんでいた。
「…うぅ…あぁぁぁぁ!!」
俺の悲鳴が、医務室に響いた。