おほしさま-2--2
〜〜〜
翌日。
俺は、ひどくやつれていた。
昨日は一睡もしていない。寝れなかった。目をつぶると、瞼の裏には沙織しか出てこなくて、それでいて離れなかった。
今日もお見舞い。
脳裏に後6日という考えが焼き付いて離れない。
今日も病院は賑やかだ。
この賑やかさが許せなかった。
−お前らはどうせ治るんだろ?
−お前らはそれほど深刻じゃないだろ?
ダメだ、この人達に罪はないんだ。
でも、その考えが頭から離れない。
どうすれば…どうすれば…。
〜〜〜
「おー、お見舞いだー」
平静を装い、病室に入る。
沙織は心配性だから…心配させてしまうのはいけない。
「…あ、宏輔だ。今日は百合乃ちゃんも来てるよー。」
「おぅ、宏ちゃん。今日は休みだからなー」
香坂 百合乃。俺の幼なじみで、沙織の次に仲が良い。
良き理解者だ。
「お?百合乃、久しぶり」
「…じゃあ、あたしは出ていくわ。じゃあね沙織♪」
「うん♪じゃあねー」
百合乃が病室から出ていく。
百合乃なりの配慮だろう。
俺と沙織の仲を1番良く知っている人物だ。普段なら感謝したいのだが、今はいてほしかった。今の俺じゃあ……沙織を見るのがつらすぎる。
「…宏輔」
百合乃を見送った後、入口でまだ固まっている俺の名前をよぶ。無意識に涙が込み上げる。
「…なんで泣いてるの?」
「いや、目にゴミがな…」
気付かれてはいけない。
隠せ。隠し通せ。
「…ぎゅうッてして」
いつものお願い。
これを後何回出来るのだろうか。
イヤな思いだけが駆け巡る。
俺は、いつものようにベットに近付くと、優しく沙織を抱きしめた。
「ん〜……」
幸せそうな沙織の声。
温もりとお日さまの香りが全身に伝わってくる。